2023.06.28

パーパスとは?定義からパーパス経営・ブランディングなどについて解説

近年「パーパス」という概念が、経営やマーケティングの世界で注目を集めています。人口減や社会課題に対する認知の高まりなど、ビジネスの環境が大きく変化していく中、「企業の存在価値」「ブランドの存在理由」がより強く求められる時代に突入しているのです。

本記事では、パーパスとは何か、なぜ今パーパスが求められているのか、パーパスを軸にした経営・ブランディングの強み、そしてそれらの具体的な実践方法は何かを解説していきます。 

目次

「パーパス」とは何か

パーパスとは元来「目的」「意図」という意味です。近年ではビジネスの場面において、その企業や組織が「なぜ存在しているのか」という「存在意義」を指すようになり、企業経営やマーケティングにおいて注目される場面が増えてきました。

企業を運営していくにあたって、なぜその企業が存在しているのかを証明する際、従前までは「ミッション」や「ビジョン」といった言葉で説明されていましたが、それらとパーパスは何が異なるのでしょうか?

パーパスとミッション・ビジョンの違い 

一言で説明すると、パーパスは「自社が世界に存在する理由(Why)」を追求しているのに対して、ミッションは「自社がやるべきこと(What)」、ビジョンは「自社のあるべき姿(Where)」を表しています。企業のミッションやビジョンを実現するための上位概念がパーパスである、とも言えます。パーパスがはっきりしているからこそ、自社のやるべきこと・あるべき姿を定義できるのです。

また、パーパスは「自社にとっての価値」ではなく「自社を含めた“みんな”にとっての価値」であることが特徴です。広く社会に対して開かれた概念で、「こうした社会の課題を(自社が)解決することが存在理由」であるとされています。

まとめると、「自社が存在する理由」を通して、「みんなの価値」を実現するのがパーパスなのです。

先進企業が注目する「パーパス」

日本だけでなく、世界の先進企業もパーパスに注目しています。世界最大級の経営コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーも、「パーパスの設定は、ビジネスにおける成功のカギである」と提言しています。

また、マーケティングの大御所であるフィリップ・コトラー氏も、マーケティングの基本である4つのP(Product、Price、Place、Promotion)に5つ目のPを加えるべきだと発言しています。5つ目のPとは「パーパス(Purpose)」です。

このようにマッキンゼーやコトラーなど、世界のビジネスをけん引する組織・人物が提唱するパーパスには大きく、「パーパス経営」と「パーパスブランディング」の2つがあります。それぞれの特徴について紹介していきます。

パーパス経営とは 

パーパス経営は、企業の存在意義を強く意識しマネジメント、それを社会に広く訴求していく経営のことを指します。パーパス経営は、現代の社会課題を解決しながら、利益を確保していく非常に高度なマネジメントです。

さらに、そこで働く従業員も、自社のパーパスは何であるか、そのパーパスを実現するために事業を運営し、日々の業務を通して如何に貢献できるかを常に考え仕事に取り組むことができます。

パーパス経営の強み① 企業の永続的発展につながる

パーパス経営を実践すると、企業寿命が長くなると考えられています。その企業が「世界に存在している理由」が明快であり、生活者やステークホルダーに受け入れられる可能性が高くなるからです。

さらに、パーパスは、ミッションやビジョンよりも、より広く大きな課題を意識し共創を生み出すことが多いため、イノベーションが起こしやすくなります。社内でイノベーションが生まれやすくなれば、新規顧客を獲得できるチャンスも増え、企業が長続きする、というロジックです。

パーパス経営の強み② 従業員エンゲージメントの向上

パーパス経営を実践すると、従業員のエンゲージメント向上につながります。経営陣と従業員が同じ志を持って働くため、従業員側が「その企業で働いている意味」を感じながら日々の業務を行うことができます。

パーパス経営の強み③ 意思決定のスピードが上がる

意思決定には通常、さまざまな部署のいろいろな思惑が影響します。自社が存在する理由がはっきりしない組織では、そうした属人的な要素が意思決定に影響するため、スピードがどうしても遅くなってしまいます。

パーパス経営を実践していれば、迷ったときにパーパスに立ち返ることができます。パーパスに合わない意思決定は自ずと選択肢から外れるので、必然的に意思決定のスピードが速くなってきます。

パーパスブランディングとは

パーパスブランディングとは、自社が掲げるパーパスを世間に認知してもらい、社内外のステークホルダーから多くの共感や信頼を獲得してブランディングにつなげる手法のことを指します。

従来のブランディングとパーパスブランディングの違いは、前者が生活者にとっての価値を「ブランド」という形で提供する一方、後者は「生活者の賛同や共感」を軸に価値を打ち出すところにあります。

パーパスブランディングの根底には、「三方良し(売り手よし、買い手よし、世間よし)」の考え方があるとも言い換えられます。

パーパス経営がマネジメントや意思決定、日々の業務など、自社の事業に焦点を置く一方で、パーパスブランディングとは、会社の外のステークホルダーに自社のパーパスを知ってもらうブランディング手法です。

パーパスブランディングの強みには以下2つがあります。

ステークホルダーの信頼を得やすい

顧客や従業員、株主・投資家といったさまざまなステークホルダーの信頼を得やすくなるのが、パーパスブランディングの大きなメリットです。

特に、現代はSDGs(持続可能な開発目標)やESG投資(環境・社会・ガバナンス)などのスローガンの隆盛からわかるよう、社会的課題を解決する経営が主流になっています。

投資家からの信頼・注目が得られるほか、生活者もエシカル消費など、社会的課題を「消費者としての自分が、消費者として自ら解決したい」と考える人が増えています。

人材採用がスムーズになる

人事領域においても、パーパスを起点とした採用や育成、ローテーションの重要性が指摘されています。パーパスを発信することで、それに共感・共鳴した新たな人材をチームに取り入れることができるようになります。

現在の企業社会は人材不足が深刻化している一方、離職率の高さも問題視されている不思議な時代です。この現象は、30代以下の若い世代が「自らが働く理由」を強く意識した働き方、ライフスタイルを求めていることが大きな理由です。

企業にとっても、人材採用は経営戦略の重要な仕事であり、自社にフィットする人材が長く働ける環境を構築することが求められています。そうした中に、「パーパスブランディング」を実践していれば、自社に本当にマッチする採用戦略を行うことができるでしょう。

なぜ、今「パーパス」が求められているのか

ではなぜ今、パーパスが求められているのか。パーパスの注目度が高まっている背景には「VUCAの時代」「DXの推進」「ミレニアル・Z世代の価値観の変化」の3つの要素が挙げられます。

VUCA時代到来

現代は、「変動性(Volatility)」「不確実性(Uncertainty)」「複雑性(Complexity)」「曖昧性(Ambiguity)」の頭文字からなるVUCAの時代と言われ、これまでのビジネスのやり方では通用せず、先を見通しにくい環境に突入しています。

そのような環境では、意思決定の速さや、組織を必要な形で変革させていくことが求められます。しかし大企業病にかかっている組織や、組織としてのパーパスがはっきりしていない企業では、変化の前に足がすくんでしまう=変化にどのように対応していくべきかわからない、といった状況に陥ってしまいます。

一方でパーパスがはっきりしている企業では、必要な意思決定を迅速に実行することが可能で、モチベーションが高い社員がそろっているため、変化をむしろ「楽しもう」と考えることができるのです。

平時よりも、時代の変革期にこそ問われるのが「なぜ、その企業が存在しているのか」です。荒波に揉まれるときこそ、決して自分たちを見失わない「存在理由」がある企業は、しなやかに変化に対応できます。このVUCAの時代に突入したことが、現在パーパスが求められている大きな理由の一つです。

DX推進のため

コロナ禍以降「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」に力を入れる企業が増えています。少子高齢化が進む社会を生き抜くためには、企業内でデジタルを積極的に導入し、コストカットを含む競争力の強化に努めていく必要があると判断した企業が多いからです。

社内でDXを推進していくときにこそ重要になるのが、パーパスの有無です。通常、DXを手段に、社内のムダを省いていく際には、さまざまなハレーションが発生します。特に大企業では、変化を嫌う勢力が根強く、思ったようにDXが進まないケースも少なくありません。しかし、その企業に確固たるパーパスが存在し、その必要性が理解されていれば、DXがスムーズに導入される空気が醸成されるでしょう。

DXはあくまで企業の競争力を強化する手段に他なりません。その有効な手段を実現するためには、上位概念であるパーパスが経営者だけでなく、広く現場にも浸透している必要があるのです。

ミレニアル・Z世代の価値観の変化

現在の30代半ばから20代前半までのミレニアル・Z世代は、今後の企業を背負う人材です。彼らは、幼い頃からモノに溢れた生活をしているため、物質的な欲求よりも、「社会に貢献したい」「自分にしかできない仕事をしたい」という精神的な欲求が強い傾向にあります。

売上規模や業界内での立ち位置よりも、「その企業の存在理由は何か」「存在理由の証明のために、自らは何を果たせるのか」と、パーパスの実現を潜在的に願っている可能性があります。

こうした人材採用の場面でも、パーパスが求められるケースが増えているのです。 

パーパス経営・パーパスブランディング実践に向けて

これまで「パーパス」とは何か、なぜそれが求められているのかを説明してきました。ここからは、自社で「パーパス経営」と「パーパスブランディング」を進めていく方法について解説していきます。

パーパス経営の進め方

①自社のパーパスの明確化・言語化

パーパス経営を実践する第一歩は、自社のパーパスが何かを言語化することにあります。そのためには、自社の歴史を振り返るプロジェクトチームを組成し、社内のさまざまな部署・階層の従業員を巻き込んで議論していく必要があります。

パーパスを言語化する際に注意すべきポイントは以下4つです。

  • 短くて覚えやすい
  • 独自性が高い
  • メッセージ性がある
  • 行動指針を含めている

キャッチーでありながら、具体的で理解しやすいパーパスを定義しましょう。

パーパスを事業に「落とし込む

パーパスを事業に落とし込む際には、そのパーパスを実現するための評価制度や目標を同時に設定していきましょう。

特に、現場の責任者であるマネージャー自身が、パーパスを深く理解し、それを個人・チームの仕事にどのように活かしていけるかを考えることが重要です。数値目標や行動指針など、現場で働く従業員が「自分はこういうパーパスを実現するためにこの業務に取り組んでいる」と実感できる具体的な評価項目や仕組みを構築していくことが重要です。

パーパスブランディングの進め方

「まだ実現されていない社会的価値」と「共感」に訴えかけるステートメントの作成

パーパスブランディングは、自社の存在理由、すなわちパーパスを主に社外に伝える手法のことを指します。その際に「今はまだ実現されていない社会的価値」を自社がどのように解決していくか、という姿勢を明確にすることが重要です。パーパスをブランディングしていくためには、「現在は解決されていない社会課題」を意識し、それをどのように自社が解決できるかを考えていきましょう。

また、生活者に「共感」されやすいパーパスを打ち出すことも有効です。パーパスは、広く一般人に評価されて初めてその効果を発揮します。

パーパスブランディングを中心とした情報発信

通常のブランディングでは、価格やスペックなどの「目に見える価値」を中心にした情報発信を行うケースが多い一方、パーパスブランディングでは、「目に見えない価値」を打ち出します。

そのためには、自社のパーパスをストーリー仕立てに発信するほか、生活者の琴線に触れるような手法での情報発信を考えていきましょう。

まとめ

本記事ではパーパスとは何か、なぜパーパスが必要とされているのか、パーパス経営、パーパスブランディングとは何かを解説しました。

経済状況が大きく変化する中、企業の存在理由が今日ほど求められている時代はないかもしれません。自社・自チームのマネジメントにパーパスの考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。

パーパスや組織づくりについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

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BIZ GARAGE 編集部

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