WEBアクセシビリティ対応を行うことが当たり前の社会に
WEBサイトやスマホアプリなどを利用するのは、健常者だけではありません。高齢者や障害を持つ方など、視覚や聴覚、PCやスマホの操作にハンデを持つ人たちも当たり前にWEBサイトやアプリを利用しています。
平成24年の調査によると、視覚障害者の91.3%がインターネットを利用しています(出典:総務省「障がいのある方々のインターネット等の利用に関する調査研究」)。また高齢者のインターネット利用率も60代で90.5%、70代で74.2%です(出典:総務省 令和2年版情報通信白書)。こうした方々は、音声読み上げのアプリケーションを利用して、WEBサイトやアプリを「耳」で「閲覧」しています。
このような状況に対して、企業は対応できていません。現状では、目の見えない方・見えにくい方に向けたWEBアクセシビリティに対応している企業は、約1割にとどまっています。WEBアクセシビリティ基盤委員会が実施した
「一般企業におけるWEBアクセシビリティ方針策定と試験結果表示の実態調査(2019年2月)」(出典:ウェブアクセシビリティ基盤委員会)
によると、調査対象サイト224事例のうち、視覚障害者への配慮事項を記載しているサイトは24事例にとどまっています。
つまり、まだ1割のサイトしか、WEBアクセシビリティに対応していないというのが現状です。多くのサイトは音声読み上げのアプリケーションに対応していない設計になっているということです。
すでにアメリカでは、ADA法(障害を持つアメリカ人法:Americans with Disabilities Act of 1990)により、WEBアクセシビリティへの未対応が訴訟に発展するケースも急増しており、日本企業も欧米を中心とする海外進出先で指摘を受けるリスクが高まっています。
こういったグローバルでの広がりを受けて日本でも、昨年9月のデジタル庁設置に伴い施行されたデジタル社会形成基本法に、すべての国民にWEBアクセシビリティを保証する旨が明記されました。また、2013年6月に制定された障害者差別解消法も、2021年5月に参議院本会議で改正が可決、成立しました。
これまで合理的配慮の義務付けは国や自治体のみで、民間事業者には「努力義務」となっていましたが、今後は「義務」として、配慮提供が求められることとなります。改正法は、交付の日(令和3年6月4日)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されますので、ひとつの目安として、2024年の5月までにWEBアクセシビリティ未対応の企業には、対応することをお勧めしたいと考えています。
アクセシビリティ対応のその先、ユーザビリティやUXの向上を
こういった社会的なWEBアクセシビリティ対応を求める機運の高まりもある中で、対応の基準として日本にはJIS X 8341-3(高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ)があります。まずはこのJIS規格にしっかり対応し、規格に基づいた診断を行うことが一般的な基準です。
しかし、このJIS規格に対応しているかどうかを、既存のアクセシビリティチェックツールだけで行うことについては、網羅的な課題発見には限界があります。そのため、専門家の目視による診断を行うことが最も対応として望ましいと考えています。
さらに上記のJIS規格診断をして改善を行った上で、実際に障害のある方によるユーザーテストを行うと、アクセシビリティだけではないユーザビリティやUXの向上につながると考えます。
診断から実装までワンストップで対応
博報堂はユニバーサルデザインコンサルティングのリーディングカンパニーである、株式会社ミライロと、WEBサイト制作を担うグループ会社である博報堂アイ・スタジオと協働して、WEBアクセシビリティ改善ソリューションを開発いたしました。
前述の環境変化への対応および、WEBアクセシビリティ対応だけに留まらない、その先のユーザービリティやUXの向上をクライアント企業にお届けします。ミライロ社がWEBアクセシビリティを診断、改善コンサルテーションまでを担当し、その上で博報堂アイ・スタジオが新UI提案、およびサイト改修実務を担当。博報堂が全体統括としてプロデュースを行います。対面でもリモートでも対応可能なこちらのソリューションは、サイトの診断から実装までを一気通貫で対応させていただくことによって、相談窓口を博報堂に一本化することが可能です。
特に診断領域においては担当するミライロ社とのタッグを組むことにより、以下のような強みがあります。
- WEBアクセシビリティの専門家の目視によるJIS診断により、動作確認も含めた完全なチェックを行うことが可能
- さらに障害のある方のモニター登録数が国内最大級であるため、障害の種別や状態など多様な条件に対応したモニター診断を行うことが可能
- ミライロ社から提供する診断結果は、具体的な修正方法まで提示され、修正作業指示書としても活用できる
SDGs活動の第一歩として、WEBアクセシビリティの改善から始めてみては?
いくつかのクライアント企業の診断に立ち合わせていただいた際に私がいつも感じることは、WEBアクセシビリティの診断チェックで引っかかるポイントは、すごく簡単なところばかりだということです。ただ、世の中には様々な人がいて、その誰もがインターネットやアプリを利用しているのだということを意識して、対応しようと思ったらすぐに対応できるようにしなければいけません。
最近はテレビニュースや新聞で「SDGs」関連の情報に触れない日はないといっても過言ではありません。そうは言われても、自分の会社で何から始めればよいか分からないという方も少なくないのではないかと推察しています。そういった悩み事を抱える企業様は、簡単に始められる自社サイトのダイバーシティ対応として、まずはWEBアクセシビリティの改善から始めてみてはいかがでしょうか?