2025.04.28

「キワ」マーケットを見極める7つの経営視点とアプローチ|ウェビナーレポート(後編)

2024年11月14日、ブランド戦略をテーマにウェビナーを実施しました。「未来予測」が難しくなっている中で、選ばれ続ける企業やブランドになるためにはどのような判断が必要か。社会変化に注目しながらブランドの独自性を高めるために、マーケットの「キワ」に焦点を当てる考え方を紹介しました。多くの方にご視聴いただきましたので、その模様をお伝えします。

ウェビナーでは、博報堂のマーケティング変革プロジェクト「LEAD2030」メンバーが登壇し、独自調査で明らかになった、生活者に選ばれ続けるための戦略を語ってもらいました。

後編の本記事では、「キワ」マーケットで輝くためのポイント、そして「LEAD2030」の内容などについてご紹介します。

 

前編はこちら

⇒2030年に選ばれるブランドになるには?二極化するマーケットと価値観|ウェビナーレポート(前編)

経営戦略に課題をお持ちの方へ
博報堂では、未来の社会変化からマーケティングを捉えなおすネクストマーケティングプロジェクト「LEAD2030」を提供しています。人口減少、地域・世代格差、単身世帯の増加などの未来の様々な社会変化を見極め、バックキャスティングの視点で未来シナリオを準備し、“いま・ここ”のマーケティング変革を実現するための支援を行います。

目次

「キワ」マーケットで輝くために

松谷 拓哉(博報堂ネクストマーケティングプロジェクト「LEAD2030」メンバー)

ここまで、二極化が進む生活者とその価値観についてお話いたしましたが、ビジネスモデル、いわゆるスマイルカーブに関しても同様のことが言えます。スマイルカーブにおける「キワ」は、バリューチェーンにおける上流と下流のようなところですが、今、それぞれに特化して収益を上げている企業・ブランドが注目されています。

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上流側でいうと、企画・開発の短縮で収益を上げ、ヘアケア市場でのゲームチェンジャーになった某化粧品メーカー。一方、下流側では、ファンマーケティングの徹底で独自のポジションを確立し、顧客接点の長期化で収益を上げた某ビール製造メーカーです。

2つの企業に共通して言えるのは、「経営者の判断」です。どちらの経営者も、「キワ」を決断して、事業の方向性を探ったことがインタビューでわかりました。 

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このように、コロナ禍以降、経営の意思決定方法が変化してきています。予測可能な未来に目標を立て、マーケットとチャンスを発見する大企業的アプローチ(Causation)から、予測不可能だからこそ手札を最適化し、マーケットとチャンスを紡ぎ出す起業家的アプローチ(Effectuation)にシフトしてきているのです。

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事業の意思が重要になる時代においては、長期的な利益を生むことと、継続的な仕組みを作ることがポイントになります。

未来を判断するためのマーケットのキワ 7つの視点

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松谷 では実際に、未来を判断して進んでいくときに、どんな視点、どんな選択軸を持てば良いのか。7つの視点をお話させていただきます。

マーケットのキワ①「デモグラ」(人口動態)

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人口の1/3近くが65歳以上の高齢者になる2030年、あらゆるブランドのターゲットが高齢者になるのでしょうか?この課題の視点として考えたのが、普遍的ニーズを満たす「ALL発想」と、一人ひとりの特性に合わせたプロダクト開発を目指す「EVERY発想」です。

例えば性別を規定しないライフスタイルの提案や、男性が使っても女性が使っても良い商品・サービスなどは「ALL発想」で、自分の肌の色に合わせて絆創膏の色が選択できるような事例は「EVERY発想」です。

マーケットのキワ②「顧客」

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推し活がトレンドになっていますが、2030年にはオタク人口の比率が30~40%になると言われています。その時、顧客の捕まえ方にも「キワ」があるかもしれません。

具体的には、こうだったらいいのにという不満を抱える既存顧客か、そもそも市場に入れていないターゲットか、どちらを引き込むのかという選択です。前者は「既存顧客の未充足ニーズ」に対しての商品開発(飲み物やマスクで落ちないリップなど)で、後者は「非顧客の諦めニーズ」を捉えた戦略(隙間時間に気軽に立ち寄れるジムなど)が該当します。

マーケットのキワ③「価格」

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年収だけでなく、富や消費など、あらゆる二極化が進む中、絞った高付加価値を目指すのか、あるいは、あらゆる価値に手早く対応するのか。つまり「プレミアム」か「プチプライス」かという選択軸が考えられます。

自分自身が何にお金を払っているのかということにシビアな目を向ける今の生活者ですが、インフレの局面では、高い分、良いものをという「プレミアム」が復活するのではないかと思われます。一方で、目的を果たせるならコレでいいやという「プチプラ」も引き続き伸長するものと思われます。

マーケットのキワ④「価値の起点」

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あらゆる商品の裏取りが容易にできる時代、なんとなくのブランドイメージは購入に寄与しなくなってきています。生活者にとっての豊かさを考えた時、それは健康だけなのでしょうか。

ここに生じる「キワ」は、「機能エビデンス」と「情緒イメージ」です。ヘルスケアの解像度が高まる中で、健康志向と心の豊かさは並列で起こりうるニーズです。食事に合わせやすい健康ブランド茶などは前者の例で、体にある程度害があると言われるお酒やタバコは、逆に心の健康に寄与するものとして、受け入れられる可能性があります。

マーケットのキワ⑤「生活者ニーズ」

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ほとんどの困りごとが解消されて、新商品への期待も極めて低くなっている今、生活者の悩みをこれ以上見つけることができるのかという視点があります。具体的には、生活の中の不満を消すように技術を進化させる「ペイン解消」か、あるいは、そもそもの不満の捉え方を発想で転換する「暮らしのアップデート」かという「キワ」です。

イヤホンを例にとると、前者はノイズキャンセリングのイヤホンで、後者は周囲の自然の音と一緒に音楽が楽しめる骨伝導イヤホンが該当します。

マーケットのキワ⑥「オケージョン」

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今は、働き方からライフスタイルに至るまで、生活者ごとのタイムライン(生きている時間軸)がパラレルに存在する時代です。そんな中で、いわゆるオーソドックスな使われ方”を定義できるのかという視点を持つことも必要です。

これを私たちは「モーメント」と「ジョブ」という2つの選択軸で捉えてみました。「モーメント」は、商品が持つ価値を発揮するオケージョンを企業が規定し、それに合わせて生活者が使用するというもの。夜間美容や温朝食、3時のおやつなどがこれに該当します。

一方「ジョブ」は、商品が機能する瞬間が無数にあり、生活者自身がそれぞれ自分なりの使い方を探るというもので、睡眠負債やミールキットなどがこのカテゴリーにあてはまります。

マーケットのキワ⑦「消費動機」

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人生100年時代と言われる今、理想の未来に向き合うのか、それとも、今この瞬間を大事にするのか。日々の過ごし方は生活者それぞれの考えによるところが大きく、それに伴い消費の理由も様々です。

私たちはその「キワ」を、「永劫消費」と「刹那消費」という選択軸で捉えてみました。前者は、一日の行動習慣に合わせた健康提案ブランドなどが想定され、後者は、日常の中の大事なシーンを最大限満足させるための、カフェインを大量に含む飲料などが考えられます。

「LEAD2030」のアプローチ

古賀 以上、マーケットの「キワ」を攻略するための7つの視点と選択軸をご紹介しましたが、最後に、私たちのプロジェクト「LEAD2030」について簡単にお話させていただきます。

私たちのアプローチは、未来のシナリオから、未来の課題をあぶり出し、今からできることを考えるというものですが、企業の皆さんとご一緒する時は、次世代を担う社員の方々が部門を越えて、自分たちの未来の企業、あるいはビジネスの姿を考えるスタイルで進めていきます。

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また、未来洞察を踏まえたマーケティングウェイのインプットから、現業の業務支援や商品開発に至るまで、様々なレイヤーでのお手伝いが可能です。経営の新ビジョン、組織作りに関してもご一緒できるので、ぜひこの機会に、ご相談いただければと思います。

博報堂では、未来の社会変化からマーケティングを捉えなおすネクストマーケティングプロジェクト「LEAD2030」を提供しています。人口減少、地域・世代格差、単身世帯の増加などの未来の様々な社会変化を見極め、バックキャスティングの視点で未来シナリオを準備し、“いま・ここ”のマーケティング変革を実現するための支援を行います。

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プロフィール

sol_id101_15写真左から、松谷 拓哉、山下 梓、古賀 晋


古賀 晋

株式会社 博報堂 ストラテジックプラニング局

2004年博報堂入社後、企業/地域ブランディング専門部門を経て、一貫してブランディング・マーケティングを担当。近年では、自動車、トイレタリー/住宅等の消費財耐久財に加えて、BtoB企業などのブランド戦略を統括。現業に加えて、未来起点の全社プロジェクト「LEAD2030」のプロジェクトリーダーとして、各お得意先のミライを創造中。共著:超図解・新しいマーケティング【入門】~生活者価値を創造する博報堂の流儀

 

松谷 拓哉

株式会社 博報堂 ストラテジックプラニング局

2018年に博報堂入社後、現職。一般消費財・耐久財メーカーやNPO、都市開発など多様なステークホルダーのマーケティング活動をサポート。市場分析やターゲット選定をはじめ、新商品開発やコミュニケーション戦略立案など幅広く対応。

 

山下 梓

株式会社 博報堂 ストラテジックプラニング局

2019年博報堂入社。耐久財、食品・飲料メーカー、スタートアップのマーケティング活動のほか、ブランディングやコミュニケーション戦略・事業戦略の立案、新商品開発などに従事。経営やビジネスと人間性らしさの共存の可能性を探る “HAKUHODO HUMANOMICS STUDIO”にも所属。

※肩書きは2024年11月時点のものです。

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BIZ GARAGE 編集部

ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代。
BIZ GARAGEのコラムでは、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。

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