最終更新日 2023.9.26

博報堂が考える、新しい時代の組織のあり方|自分起点のインナーブランディングとは?

テレワークやギグワーク、副業などが普及した近年、ワークスタイルや働くことの価値観が大きく変化し、会社と社員の関係性や組織のあり方に変革が求められています。

博報堂の独自調査では、こうした時代の転換点において、社員が決められたことを実行するだけではなく、ゼロから作り上げる創造性を期待する声が高まっています。

今こそ、個々の創造性を開花させ、不確実な時代に価値を発揮し続けられる組織づくりが必要ではないか——。

長年にわたってインナーブランディングに携わってきた博報堂ブランド・イノベーションデザインはそう考え、新しい時代の組織づくりをサポートするために、組織・人材開発プログラム「創造する組織」の提供を始めました。

“じぶん”と“創造性”をキーワードにした新しい時代の組織づくりとは何か?そして、組織の変革は何をもたらすか?「創造する組織」のプログラムを解説するとともに、これからの組織のあり方について解説します。

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目次

個人と会社が対等に自律していく時代へ

リモートワークの浸透を筆頭に、副業や転職、ギグワークなど、働き方そのものや働くことの価値観の多様化が進んでいます。

さらに、テクノロジーの進化に伴いWeb3時代が到来し、オフィスに集まって仕事をするのではなく、ブロックチェーン上で運営される組織をベースに報酬を得る未来までも予測されています。web3によって社会が「中央集権型」から「分散型」へと移行すれば、従来の組織や個人のあり方は大きく変化し、個人と会社が対等に自律していく時代が訪れることでしょう。

そうした中で、仕事とプライベートの分け隔てなく、複数のコミュニティ/プロジェクトに参加する個人が増えており、一人が複数の“じぶん”を生きる世界「I’s(アイズ)」という考え方の重要性も増してきています。一人の人間が多面的に多様な仕事に携わり、プライベートも含めて複数の人間やコミュニティと有機的につながっていく。そんな時代がすでに訪れているのです。

I’sという考え方に基づくと、これまでの「会社という組織に所属する個人」という位置づけに変化が生じ、会社と社員の関係性はもちろん、組織におけるコミュニケーションのあり方も変わってきています。働き方や組織がどう変わっていくかの変曲点に立っている今、それらを見直す必要に迫られていると言えます。

 “じぶん”起点の新しいインナーブランディング

企業やブランドは、あくまでも人が作り上げていくものです。社員一人ひとりがブランドのパーパス/ビジョンを自分ごと化することなく、企業の掲げるパーパスを実現したり、生活者の心を動かしたりすることはできません。ゆえに、インナーブランディングは強いブランド構築に不可欠だと言えます。

博報堂ブランド・イノベーションデザインは、20年以上にわたって生活者視点からのインナーブランディング、組織文化開発、リーダーシップ開発などのコンサルティングを行ってきました。その特徴は、広告会社としてのインナーコミュニケーションのアプローチと、組織開発のアプローチを融合した点にあります。

そして、今回、取り巻く環境の変化を踏まえたインナーブランディングのあり方へと刷新するために「創造する組織」プログラムの提供を始めました。

新しい時代の組織のキーワードは“じぶん” 起点と創造性

従来のインナーブランディングとは異なるアプローチを行う「創造する組織」のキーワードは、“じぶん”起点です。

これまでは、大別すると会社が決めたパーパス/ビジョンを上層から現場まで浸透させるトップダウン型が主流でしたが、「創造する組織」では、I’sの考え方に基づく“じぶん”起点でパーパス/ビジョンを捉え直すところに特徴があります。

仕事にかかわらず、人生として何を大切にして生きているのかという “じぶん”の内面を振り返り、その視点から周囲にいる同僚や上司の大切にしていることを互いに知ると、“じぶん”やチームの創造性の源泉が何かについて、想像を超えた気づきや発見があります。

その経験を通じて、“じぶん”と会社やパーパス/ビジョンの関係性、“じぶん”と社会の関係性を探求し、出会い直すことで、組織としての強みや大切にしていることに関する議論が活性化し、エンゲージメントの向上につながっていくのです。

 社員一人ひとりが創造性を発揮することで組織が変わる

「創造する組織」プログラムを開発するにあたって、さまざまな企業の経営層・管理職層・一般職層1,250人にアンケートを実施しました。

会社への愛着や誇り、仕事のやりがいなどについて質問する中で、「社内の求心力を求める経営層」と「外とのつながりを求める一般層」のギャップなど、さまざまな課題や価値観の世代間格差が見て取れました。

社内の求心力を求める経営層VS外とのつながりを求める一般層

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  • 経営層は自社や仕事への強い愛着や誇りを持っているが、一般社員はその半分程度
  • 一般社員の8割は「副業賛成」としており、やりたい仕事があれば転職するとの意識も6割
  • 会社と社員の関係性は大きく変わっていく

アンケート結果の分析からは、これからの企業変革には創造性は不可欠であると認識している一方、多くの会社では創造性が足りておらず、今こそその必要性を求めているという結果が浮かび上がりました。

不確実で複雑性が増す世界では、従来の成功の方程式は機能せず、一人ひとりがそれぞれの多様な創造性を発揮することで、個の集合体であるチームの創造性も高まり、さらにはチームの集合体としての組織の創造性も高まる。そうした考えに基づいて「創造する組織」プログラムを作成し、企業変革を果たす基盤として「創造性を発揮する個と組織を生み出す」というコンセプトを導き出しました。

「創造する組織」のプログラム|働くことの意味を探求し、会社と新しい信頼関係を結び直す

「創造する組織」プログラムは、自分自身への気づきや発見、社会との関係性から出発し、会社との関係性を改めて探求し、働く意味や仲間との関係を再構築することで、創造的かつイノベーティブな次世代型組織を創り上げることを目的としています。

ここからは、「創造する組織」の基本プログラムをご紹介します。

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STEP1 じぶん

パーパス/ビジョンを社員へ落とし込んでいく上図の左側は、従来のトップダウン型のインナーブランディングを示しています。

一方、上図の「創造する組織」プログラムでは、“じぶん”を起点とし、主体的に会社との関係性を結び直すモデルを構築しています。

例えば、上図のような大切にしたい価値観を選ぶワークシートなどを用い、自分自身が気づいていない価値観を知った上で、自分は会社や社会とどのように関わりたいかを探求していきます。

STEP2 オープン化

STEP1で“じぶん”の内面を掘り下げた後、STEP2では“じぶん”の周りにいる人や関わっているコミュニティなどを振り返ります。

プライベートな部分も含めて、“じぶん”が影響を受けた人やコミュニティを可視化し、“じぶん”が大切にしていることや成し遂げたいことを知ると、そこには多くの気づきや発見があります。

ワークショップなどを通じてそれらをオープンに話し合うことで、同僚や上司の新たな一面を知り、組織として目指すものや強みについて考える機会につながります。

“じぶん”や周囲の人の創造性に気づき、互いを尊重し、わかり合うことが最大の目的で、経営層と一般職層を交えてフラットに話し合うと大きな成果を得ることができます。

STEP3 パーパス

STEP3では、会社のパーパスや行動指針に対して、自分が働くことの意味を掘り下げ、会社と新しい信頼関係を結び直します。

ただ単純にパーパスに従うのではなく、パーパスと“じぶん”がリンクする部分はどこか、どういう意志を持って、どういうモチベーションで関わっていくかを考え、尊重することがポイントです。

“じぶん”起点でパーパスと出会い直すことにより、会社から与えられたものを理解するというトップダウン型のアプローチとは異なる、“じぶん”にとってのパーパスの意味合いが浮かび上がってきます。

STEP4 インナーエンゲージメント

STEP4では、会社を通じて社会に働きかける上で、“じぶん”が大切にしたい価値観を表出させることでインナーエンゲージメントを高めます。

STEP5 ミライのじぶん

最後に、“じぶん”の個性や強みを踏まえ、社会にとっての存在意義を結晶化させます。

「創造する組織」プログラムでは、これら5つのSTEPをベースに、それぞれの会社が目指す姿や抱える課題に応じて内容をカスタマイズしています。

組織の発火点となる「創造するコアチーム」を作り出す

「創造する組織」のプログラムは、
①パーパスやビジョン浸透・自分ごと化
②社員の主体性・モチベーション向上
③組織風土改革
④新事業開発プロジェクトなどのチームビルディング
⑤ネクストキャリア開発
など、さまざまな場面で有効です。

プログラムは、全社、部門、プロジェクトといった各単位での活用が可能ですが、全社で推進する際は、次世代リーダー層などからなる「コアチーム」づくりが鍵を握ります。

プログラムを体験し、理解し、共感してもらう社員=「創造するコアチーム」を作り、彼らが発火点となり、その他の社員をファシリテートしてもらうことで、組織全体の創造性や自主性を育んでいきます。博報堂は「創造するコアチーム」のコーチ育成を丁寧にサポートいたします。
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「創造する組織」に必要なクリエイティブもワンストップで

プログラムを推進する中で、ブランドブック、ムービー、イントラネットといったコミュニケーションツール開発やコミュニティの場づくりなどに、ワンストップで対応できる点も私たちの強みです。

また、基本プログラムの過程で、そもそものパーパス策定や組織文化開発など、個々のテーマにフォーカスし、私たちが培ってきた知見やノウハウを提供するサポートも行っています。
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テレワークなどで組織内のコミュニケーションが希薄になったり、部門間の連携が停滞してしまったりと、組織としての課題を抱える方や、新しい時代に向けた企業改革や組織変革をご検討中の方は、ぜひ、「創造する組織」プログラムをご利用いただければと思います。

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原 節子(はら せつこ)

株式会社博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局
局長代理
チーフイノベーションブラニングディレクター

銀行および銀行系シンクタンクを経て、2000年に博報堂入社。以来、運輸、自動車、金融、流通サービス、不動産、飲料、トイレタリーを中心としたグループ・企業の統合ブランド戦略立案、事業開発、CI・VI開発、インナーブランディング、組織変革等に主に携わる。昨今は、経済インパクトと社会インパクトの同時実現に向けた博報堂SDGsプロジェクトの推進やブランドトランスフォーメーション、ソーシャルイノベーションプロジェクト(未来教育会議等)を推進中。金沢工業大学 客員教授。

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山形 健(やまがた たけし)

株式会社博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局
部長

2004年博報堂入社。ストラテジックプラニング局を経て、2007年より博報堂ブランドデザイン(当時)に所属。ダイレクトマーケティングのPDCAや、BRICs諸国でのセールス基盤構築などのマーケティング領域業務を経て、神経科学を基にしたリサーチプログラムの研究および開発、文化人類学発祥のエスノグラフィ実践などデザインリサーチ・UX領域業務に携わる。近年では、商品開発、サービス開発、事業開発の支援業務を多く手掛ける。著書に『ビジネスは「非言語」で動く』(アスキー新書)がある。

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