最終更新日 2025.4.21

博報堂SXプロフェッショナルズが企業のサステナブルな取り組みを推進|ウェビナーレポート(後編)

2024年10月24日、企業のサステナビリティへの取り組みをテーマにウェビナーを実施しました。課題を抱えている企業が多いなか、博報堂のご支援でブランド価値向上に成功した多様なクライアント事例・実績を紹介するということで、多くの方にご視聴いただきましたのでその模様をお伝えします。

ウェビナーでは、幅広い領域のSXに関する経験と専門性を持つメンバーが登壇。企業のサステナビリティへの取り組みコストを、ブランド価値に転換するための視点・ポイントとは何かについて語っていただきました。

後編の本記事では、JERAや味の素の事例、博報堂SXプロフェッショナルズのソリューションを詳しく解説します。

登壇者(肩書はウェビナー実施時のもの)

辻田 雅弘(博報堂 ストラテジックプラニング局 エグゼクティブルーム エグゼクティブビジネスプラニングディレクター)

兎洞 武揚(博報堂 生活者発想技術研究所 主席研究員 グループマネージャー)

小田部 巧(博報堂 ストラテジックプラニング局 部長 イノベーションプラニングディレクター/ SXプロフェッショナルズ EARTH MALL プロデューサー

原 節子(博報堂DYホールディングス ストラテジックデザイン事業戦略室/ 博報堂  
ブランドデザインユニット事業経営企画室 室長補佐 チーフイノベーションプラニングディレクター)

舟橋 一晃(博報堂 ストラテジックプランニング局 チームリーダー チーフマーケティング ディレクター)

島田 圭介(博報堂 PR局 PRディレクター/広報コンサルタント

前編はこちら⇒【企業取り組み事例】サステナビリティを「コスト」から「ブランド価値」に変える|ウェビナーレポート(前編)

サステナビリティに関心をお持ちの方へ
博報堂グループでは、企業のサステナビリティ・トランスフォーメーション実現を目指すプロジェクト「博報堂SXプロフェッショナルズ」を提供しています。企業の経済インパクトと社会的インパクトの統合に資するソリューション開発や経営支援、事業開発支援、マーケティング支援などを行い、これからの持続可能な社会を支える次世代ビジネスモデルの創造に貢献します。

目次

【事例】JERA|方針のインナーへの浸透・自分ごと化

 「サステナビリティ戦略の推進には、インナーの意思と社会からの共感双方が必要」というテーマで、JERAの事例についてお話させていただきます。

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JERAは、東京電力と中部電力の燃料・火力発電事業を統合した世界最大級の発電会社として2015年に発足し、現在、国内の電力供給の1/3を支えています。

エネルギー業界は私たちの日々の生活はもちろん、国の経済基盤を支えるという意味でも、これからのサステナビリティ社会を考える上でその動向が注目されています。実際、JERA2050年のCO2排出量ゼロを目指し、再生可能エネルギーの普及やゼロエミッション火力の推進など、エネルギーの「スマートトランジション」戦略を打ち立てています。

その一方、生活者の意識を調査すると、まだ十分に理解されていないという結果が見られ、JERAの戦略や事業と乖離があることがわかりました。

そこで私たちは、企業の概要やスケール、脱炭素の取組み、海外での事業展開、社会へのコミットメントなど、知られていないJERAのさまざまな事実(FACT)をあらためて提示することで、生活者の意識がどう変化するのかを見てみました。

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その結果、FACT提示後の数値が、たとえば「再生エネルギーを一気に進めるべきだ」という項目で67%から28%にスコアが下がるなど、意識の変化が見られました。

こうした調査結果を受け、私たちは、JERAがこれからのエネルギーに明確な意図をもって展開している事実を、もっと様々な角度から情報発信・活動展開していくべきではないかという結論に至りました。

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そこで私たちが考えたのが、施策の指針にもなる「企業人格」です。人に性格があるように、企業にも性格がある。どんな価値観を持ち、どんな行動をとる企業なのかを言語化する。しかも、その人格を、社員一人一人が大切にする思いと連動させる。そんな考え方のもと、プロジェクトを進めていきました。

「企業人格」を導き出すプロセスとしては、経営層のインタビューをはじめ、各部門横断によるモニタリング会議などの場を活用して探求していきました。その結果、3つの方向性に集約される「企業人格」が明らかになり、その後のコミュニケーション戦略やインナー施策、PR、情報発信などの基点・指針として機能させることができました。

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今回のJERAのケースは、自社のサステナビリティ戦略や事業推進の“意図”に関して、一般世論の“正確な理解”と“共感”をどうしらた獲得できるだろう、ということが課題でした。

その際、経営層や社員の皆さんが、自分たちが大切にする“ぶれない意思”が何であるのかを、「企業人格」という形で明確にすることで、社員も生活者であると捉えての、生活者価値転換にチャレンジいたしました。

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【事例】味の素|生活者参加型アクションの創出

舟橋 私からは、味の素で実践された生活者参加型フードロス削減プロジェクト「TOO GOOD TO WASTE~捨てたもんじゃない!」アクションをご紹介します。

このプログラムは、企業が一方的にフードロス削減の取り組みを情報公開するのではなく、食の情報サイトをプラットフォームとして生活者と継続的につながり、家庭内のフードロス削減にむけてのアイデアを生み出す、いわば社会価値共創型のプロジェクトです。

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社会主語による社会課題解決を実現するブランディング時代、パーパスが重視され、生活者が参加できる体験サービス起点のアプローチが求められています。

そのアプローチ自体も一方通行型ではなく、アジャイルに共創プラットフォームで生活者と企業がともに実践する形に変化をしていきます。まさに、生活者とブランドの関係性が、フードロス削減アクションへの“参加する・表明する・応援する”という形にシフトしています。

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今回ご紹介する味の素のケースも、企業と社会が共創する、社会課題解決型ブランディングを実践した例です。

フードロス削減は、企業が単独で解決できるような社会課題ではなく、食品製造業や外食産業はもとより、生活者が一緒になって取り組まなければならない課題です。

味の素では、「捨てたもんじゃない!~TOO GOOD TO WASTE」というスローガンを社会に掲げて、 “今まで捨てていたものにこそ素晴らしい価値がある” という価値観のもと、生活者や様々なステークホルダーとともにフードロス削減を実践するアクションを推進しました。

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こちらは、企業バリューチェーン全体にサステナビリティをインストールするという方針のもとで策定した、サステナブルブランディングの全体設計図です。右側(赤の部分)の味の素の企業活動と、左側(緑の部分)の社会・生活者側の取り組みを循環型サイクルでつなぐことで、フードロス削減の取り組みを持続可能な形にデザインしました。

特に、生活者のアクションを導く施策として、全国47都道府県の「捨てたもんじゃない!」グルメを開発し、生活者が、義務的ではなく、楽しくやってみたくなる=ファン・エシカルなインサイトを刺激するポジティブなフードロス削減の食習慣を拡げました。

さらに、社会全体で取り組む共創アクション成果=フードロス削減を「デカボスコア」として数値化することで、より実効力のある循環型サステナブルブランディングを推進した事例です。

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博報堂SXプロフェッショナルズのソリューション|サステナビリティ関連生活者調査

小田部 「博報堂SXプロフェッショナルズ」では、さまざまなサステナビリティ関連調査を行っていますが、今回は、「サステナブル購買行動調査」と「生活者の脱炭素意識&アクション調査」についてご紹介します。

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まず、「サステナブル購買行動調査」ですが、この調査は、サステナブルマーケティングでの活用を目的として、生活者の購買行動や社会意識について詳しく探ったオリジナル調査です。SDGs認知・関心度や社会購買の実践度と意識など、いくつかの聴取項目を設定し、オリジナルのサステナブルクラスターを導き出しているのが特徴です。

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SDGs認知、社会購買に関する経験、社会行動全般に対する実践度などを聴取し、「食料・日用品」「化粧品」「ファッション」それぞれのジャンルでのクラスターを抽出しています。

なかでも「食料・日用品」のジャンルでは、「社会貢献ショッパー」「安心安全ショッパー」「トレンド重視ショッパー」など8つのクラスターをプロファイルし、それぞれのボリュームとSDGs認知を数値化しています。

「生活者の脱炭素意識&アクション調査」は文字通り、日本の生活者に脱炭素の意識がどのぐらい浸透しているかを把握するオリジナル調査です。脱炭素に関する名称認知、脱炭素社会への取り組み切迫度、脱炭素に向けた行動実態などを詳細に分析しているので、ぜひご活用いただきたいと思います。

博報堂SXプロフェッショナルズのソリューション|生物多様性やネイチャーポジティブに対応「Nature Positive Studio」

島田 私からは、生物多様性やネイチャーポジティブに対応したソリューションについて紹介させていただきます。

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今、世界は人口の増加や経済の成長発展に伴いネイチャーネガティブな状況にあり、2022年の世界会議(COP)では、国際ルールの議定書や世界目標の作成など、生物多様性に関する枠組みが採択されました。

ネイチャーネガティブな状況を、ネイチャーポジティブに転換しようとして世界が動き始めている環境下で、ネイチャーポジティブへの転換の波は、日本の企業にもやってきています。

そこで私たちが開発したのが、ネイチャーポジティブの転換やネイチャーポジティブエコノミーの実現に向けて、企業を支援するソリューション、「ネイチャーポジティブスタジオ」です。

「ネイチャーポジティブスタジオ」は、未来の生活者発想を起点に、ネイチャーポジティブの未来の姿を描き、それを実現するためのビジネスアクションの立案支援や、コミュニケーション戦略の設計・実行までを包括して支援するソリューションです。

サステナビリティへの取り組みは、企業にとってのコストと思われがちです。ですが、ネイチャーポジティブスタジオは、ソリューションの開発提供に加えて、「未来の生活者発想やネイチャーポジティブが、コストではなくビジネス機会へのチャンスである」という考え方を知っていただくためのセミナーや、ネイチャーポジティブの食や都市をテーマにしたワークショップを定期的に開催しています。

私たちが提供するソリューションは、ネイチャーポジティブをコスト負担ではなく、ビジネスに新しい価値を生み出す、ビジネス機会として捉えることで、生活者や社会の新たなニーズの発掘、持続可能な良質な自然資本の調達、イノベーションなど、商品やサービスの価値を高める要素の発見を目指しています。

しかも付加価値に変えていくことで、バリューチェーンをポジティブなスパイラルに転換していくことができます。

ネイチャーポジティブスタジオでは、

  • 「Future Design~ありたい未来の創造」
  • 「Business Design~ビジネスアクションの創出」
  • 「Communication Design~新しい価値・マーケットの提案」

という3つのアプローチから、その企業らしいネイチャーポジティブの価値を見える化し、ビジネス機会の創出を支援します。

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自然資本との関わりが深い企業やサービスはもちろん、新規事業のアイデアを求め新しいテーマでブランドを作っていきたいと考えている企業、ネイチャーポジティブの取り組みを自社の強みに転換したいと考えている企業など、多くの皆様にご活用いただきたいと考えています。

SDGsの次のテーマ「BIG WELL-BEING」について

兎洞 SDGsの次のテーマとして、「Well-being」という概念が注目されています。SDGsのベースを創ったと考えることも出来るローマクラブが「成長の限界」から50年を経て発表したレポート『Earth for All』では、このwell-beingという言葉が非常に多く使われています。

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「Well-being」はそもそも“個人の健康”の定義としてスタートした概念ですが、今では“個人-社会-環境”を統合的に捉える視点に進化しています。

生活者としての私たちは、企業や団体などの組織・コミュニティに属し、その外側にはさらに大きな社会があります。そして、そのさらに外側には地球環境が存在します。

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個人のフィジカル面、メンタル面で語られた「Well-being」と、格差や貧困の無い社会、また自然資本や地球環境、とを地続きとして捉え、これら全てが良好な状態であるべきだということで、これらを統合して考えていく「BIG Well-being」の世界が到来しているというわけです。

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こうした潮流を受けて、これからは企業においても、“自然や社会の一部としての生活者”という捉え方が必要ですし、人的資本~社会インパクト創出~事業イノベーションが真に統合された経営が求められる時代になってくると考えられます。さらに、生活者と企業と社会との新たな関係構築を目指した、業界の垣根を越えた共創ビジネスも増えていくと予想されます。

「博報堂SXプロフェッショナルズ」は、こうした時代の要請に応えるためのソリューション開発を通して、BIG Well-beingな新たな企業ビジネスを支援させていただきたいと考えています。

博報堂グループでは、企業のサステナビリティ・トランスフォーメーション実現を目指すプロジェクト「博報堂SXプロフェッショナルズ」を提供しています。企業の経済インパクトと社会的インパクトの統合に資するソリューション開発や経営支援、事業開発支援、マーケティング支援などを行い、これからの持続可能な社会を支える次世代ビジネスモデルの創造に貢献します。
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プロフィール

辻田 敏宏
辻田 雅弘

株式会社博報堂 ストラテジックプラニング局 エグゼクティブルーム  エグゼクティブビジネスプラニングディレクター

博報堂SXプロフェッショナルズ共同リーダー。ストラテジックプラニング局所属。1990年博報堂入社。主にマーケティング部門で酒類・飲料・食品・トイレタリー・エネルギー自動車・情報通信・不動産・テーマパーク・小売流通業界等の得意先を担当。2019年に、本プロジェクトの前身となる「博報堂SDGsプロジェクト」を発足させ、共同リーダーを務める。得意先のSDGsアクションをサポートするための、ソリューション開発・リサーチ・提案活動に従事。

兎洞 武揚
兎洞 武揚

株式会社博報堂 生活者発想技術研究所 
主席研究員 グループマネージャー

博報堂SXプロフェッショナルズ共同リーダー。1992年博報堂入社。マーケティング、ブランディング戦略立案業務に携わった後、従業員の意識変革や組織開発の領域を専門として、企業の変革支援のコンサルティングを主要業務とする。現在は、経営層に対して、利益と社会的インパクトの同時創出を目指す、よりパーパスドリブン経営、ESG経営のコンサルティングを専門としている。パーパス策定から実装エグゼキューションまでを統合的に一貫して並走して、企業トランスフォーメーションの実現を目指す。主なソーシャルプロジェクトとして「フードロス・チャレンジプロジェクト」「未来教育会議」「かいしゃほいくえん」「未来を変える買い物 EARTH MALL」等。 

小田部 巧
小田部 巧

株式会社博報堂 ストラテジックプラニング局 部長  
イノベーションプラニングディレクター 
SXプロフェッショナルズ EARTH MALL プロデューサー

2004年博報堂入社。マーケティング局、エンゲージメントビジネスユニット、HAKUHODO THE DAY を経て、2016年より現職。 国内クライアントを中心に、戦略からエグゼキューション、トータルなコミュニケーションデザインを行う。生活者をパートナーと捉えた、創発型プランニングを好む。また、自身もNPO運営をしており、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)業務も積極推進中。 

原 節子
原 節子

株式会社博報堂DYホールディングス ストラテジックデザイン事業戦略室 
株式会社博報堂 ブランドデザインユニット事業経営企画室 室長補佐  チーフイノベーションプラニングディレクター

銀行及び、銀行系シンクタンクを経て、2000年博報堂入社。以来、運輸、自動車、金融、流通サービス、不動産、飲料、トイレタリーを中心とした企業のブランドコンサルティング業務に従事。 グループおよび企業の統合ブランド戦略立案、パーパス策定、CI・VI開発、マーケティング戦略策定、統合情報コミュニケーション、インナーブランディング、組織変革等に主に携わる。個人と組織の創造性発揮を最大化する「創造する組織」の推進をはじめ、社会への価値創出をマルチステークホルダーで取り組むソーシャルイノベーションプロジェクト(未来教育会議等)や、経済インパクト社会インパクトの同時実現に向けたSDGsコーポレート価値創造プログラム等を推進中。

舟橋 一晃
舟橋 一晃

株式会社博報堂 ストラテジックプランニング局 チームリーダー チーフマーケティング ディレクター

世界に誇れる日本企業の技術力・製品開発スピリットに共感し、可能性を引き出す パーパスドリブンによる事業活性化や、イノベーション創出支援を得意領域とする。 事業ビジョン、パーパス策定、中期事業戦略、マーケティング戦略立案をサポートし 、一般消費財・食品飲料、耐久財・サービス事業会社等プロジェクト推進経験がある。

島田圭介
島田 圭介

株式会社博報堂 PR局 
PRディレクター/広報コンサルタント

1995年博報堂入社。入社以来一貫してPR畑に所属。様々な企業や商品の広報・PR業務に従事する他、企業の危機発生時からリカバリーまでの対応を、トータルでコンサルティングを行う。また、市民と企業や行政の合意形成業務や企業の競争力を高めるための、ルールメイキング戦略等のソリューション提供に携わる。 現在は、持続的な社会と企業の成長を実現するために、博報堂SXプロフェッショナルズのメンバーとして活動。ネイチャーポジティブエコノミーの実現に向けて「Nature Positive Studio」を推進。

肩書はウェビナー実施時のものです。

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BIZ GARAGE 編集部

ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代。
BIZ GARAGEのコラムでは、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。

サステナビリティに関心をお持ちの方へ
博報堂グループでは、企業のサステナビリティ・トランスフォーメーション実現を目指すプロジェクト「博報堂SXプロフェッショナルズ」を提供しています。企業の経済インパクトと社会的インパクトの統合に資するソリューション開発や経営支援、事業開発支援、マーケティング支援などを行い、これからの持続可能な社会を支える次世代ビジネスモデルの創造に貢献します。

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