2025.09.22

デザイン経営 -経営・事業を変革するためのデザイン|ウェビナーレポート(前編)

革新が求められる時代に、社会的価値と経済的価値を両立させながらスピーディーに質の高い変革を推進していくためにはどうすれば良いのか。その解決策として「デザイン経営」に関心を持つ人が多い一方で、結局何をやれば良いのか分からない、という声が多いのも事実です。

そこで2024年12月12日、「デザイン経営」をテーマにウェビナーを実施しました。ウェビナーでは、HAKUHODO DESIGNのブランドコンサルタントが登壇。デザイン経営の具体的な取り組み事例について語ってもらいました。多くの方にご視聴いただきましたので、その模様をお伝えします。

本記事では、ウェビナーの内容から、ビジネスにおけるデザイン活用の流れ、西川株式会社の事例、デザイン経営導入のプロセスなどをご紹介します。

登壇者

HAKUHODO DESIGN ブランドコンサルタント 和泉 舞

デザイン経営に関心のある方へ
博報堂グループでは、デザイン特有のアプローチを活用し、企業や組織の課題解決や新価値創出に向けた支援を提供しています。デザイナーとコンサルタントが協働しながら、生活者や従業員を起点に考えるデザインの思想・方法論を活用し、戦略とクリエイティビティを融合。企業理念や組織文化などの構想のデザインを中心に、貴社のデザイン経営の導入を支援します。

目次

「HAKUHODO DESIGN」とは

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和泉 まず本題に入る前に、私が所属する「HAKUHODO DESIGN」についてお話させていただきます。「HAKUHODO DESIGN」はアートディレクターの永井一史が代表を務める会社で、デザイナーとコンサルタントが協働しながら、戦略とクリエイティビティを融合したコンサルティングを行っています。

「デザインの力で、未来をカタチにする。」というパーパスを標榜する「HAKUHODO DESIGN」は、課題も複雑化しているVUCAの時代、社会、企業、生活者すべてにとっての最適解を見つけ出し、社会をドライブしていくことができるのはデザインの力だと考え、

  • 「デザイン経営の推進」(経営、事業全体にわたりデザインの手法を用いて支援)
  • 「デザイン視点での新規事業・サービス開発」
  • 「事業、サービス・商品ブランディング」

という3領域で幅広くコンサルタントを行っています。

冒頭にも申し上げたとおり、「HAKUHODO DESIGN」は、デザイナーとコンサルタントが協業し、戦略とクリエイティビティを融合したアプローチを基本としています。

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企業理念・CIVIのデザイン(Vision Design)、組織文化のデザイン(Culture Design)、デザイン思考やデザインリサーチをさまざまなプロセスに活用するDesign Thinkingなどの「構想のデザイン」から、Product/Service、 UI/UX Design、Community Design、そしてCommunication Designなどの「実装のデザイン」に至るまで、幅広い領域をカバーして、企業や事業、ブランドの価値を醸成するお手伝いをしています。

ビジネスにおけるデザイン活用の流れ

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和泉 デザインをビジネスに活用する歴史を時系列で追うと、まず1960年~70年代にかけては、企業のCI、ロゴのデザインが作られるようになって、認知や差別化のためにデザインが活用され始めました。そして、1970年代後半から、アップルやダイソンといった企業が、商品のプロトタイプを開発して検証を重ねることで、機能的にも見た目的にも美しいデザインに磨き上げていくプロセスを採用するようになっていきます。

1980年代になると、「デザイン思考」という考え方が生まれます。当時の建築家が、自分自身の暗黙知を形式知化したものが「デザイン思考」です。そしてその「デザイン思考」を初めてビジネスに応用したのが、IDEOの創立者です。

さらに2004年には、英国デザインカウンシルがダブルダイヤモンドモデルを提唱して、デザインのプロセスを問題発見と問題解決の連なりであることを定式化しました。

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また日本の状況ですが、2018年に経産省と特許庁がデザイン経営宣言」というステートメントを発表します。その中では、ブランド力とイノベーション力の向上が、企業競争力の向上につながるということが説かれ、経営手法としてデザイン経営を導入することが推奨されました。

こうした流れを受け、2023年、特許庁から「デザイン経営コンパス」という資料が出されます。これはデザイン経営の実践ガイドのようなもので、徹底的に人間に向き合って、企業のブランド力、イノベーション力を向上させる経営手法であることが書かれています。

この中で新しく加わったのは、「デザイン経営」が人格形成を軸にした文化醸成や価値創造の循環的な営みであるという表現です。この場合の人格とは、「企業人格」のことを指します。

直近は、日本を含め世界中で起こる社会問題の深刻化により、資本主義の脱中心化に向けた動きが加速し、新しい社会システムの創造を目指すためのデザイン活用が進んでいます。

デザイン経営とは

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和泉 このような歴史的な流れを踏まえて、あらためて「デザイン経営」を定義すると、“デザイン特有のアプローチを広義に捉えて、経営や事業に活かしていくこと”になります。

これまで見てきたように、外観のデザインを狭義のデザインとすると、デザイン思考によるユーザー体験や製品・サービス全体のデザインにどんどん広がっていき、さらにそれが、ビジネスモデルや組織・人材など、企業全体の価値創造につながる広義のデザインへ広がってきたことがわかります。

―-では、なぜ今、デザイン経営の導入が必要なのか。

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その背景にある企業の課題、社会動向について見てみると、大きな要因のひとつは、「生活者の価値観の変化」です。つまり、機能や品質だけではなく、情緒価値や生活価値、あるいは社会的価値が重視されるようになってきたということ。

2つ目は「イノベーションの創出」で、日本における市場が成熟化していることで、社会や顧客視点での新しい価値創造が求められていること。

3点目に挙げられるのが「デジタル技術の発達」で、具体的にはオンラインとオフラインを統合した顧客体験の設計ニーズが高まってきていること。

そして4点目が「社会課題への対応」です。いわば、新たな価値創造と複雑な課題解決のための方法として、デザインというアプローチが必要とされているということが言えると思います。

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デザインの目的は、「より良くすること」です。つまり、複雑な課題を解決したり、潜在的な機会を発見したりすることにデザインは寄与します。なぜならデザイン特有のアプローチで、人の意識や行動を深く洞察し、新しいアイデアの創出や実装が可能になるからです。

―-では、デザイン特有のアプローチとは何か?

私たちは5つのアプローチを考えています。まず1つ目が「共感から始める」ということ。2つ目は「考えとカタチを往復する」。3つ目は「未来や理想から、バックキャストで考える」。4つ目は「共創プロセス」、そして5つ目が「複雑性から新しい意味を見出す」です。

 

レポート後編はこちらから
⇒西川株式会社の成功事例とHAKUHODO DESIGNのデザイン経営ソリューション|ウェビナーレポート(後編)

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BIZ GARAGE 編集部

ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代。
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デザイン経営に関心のある方へ
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