2024年10月24日、企業のサステナビリティへの取り組みをテーマにウェビナーを実施しました。課題を抱えている企業が多いなか、博報堂のご支援でブランド価値向上に成功した多様なクライアント事例・実績を紹介するということで、多くの方にご視聴いただきましたのでその模様をお伝えします。
ウェビナーでは、幅広い領域のSXに関する経験と専門性を持つメンバーが登壇。企業のサステナビリティへの取り組みコストを、ブランド価値に転換するための視点・ポイントとは何かについて語っていただきました。
登壇者(肩書はウェビナー実施時のもの)
辻田 雅弘(博報堂 ストラテジックプラニング局 エグゼクティブルーム エグゼクティブビジネスプラニングディレクター)
兎洞 武揚(博報堂 生活者発想技術研究所 主席研究員 グループマネージャー)
小田部 巧(博報堂 ストラテジックプラニング局 部長 イノベーションプラニングディレクター/ SXプロフェッショナルズ EARTH MALL プロデューサー)
原 節子(博報堂DYホールディングス ストラテジックデザイン事業戦略室/ 博報堂
ブランドデザインユニット事業経営企画室 室長補佐 チーフイノベーションプラニングディレクター)
舟橋 一晃(博報堂 ストラテジックプランニング局 チームリーダー チーフマーケティング ディレクター)
島田 圭介(博報堂 PR局 PRディレクター/広報コンサルタント)
目次
2024年に生まれ変わった「博報堂SXプロフェッショナルズ」
辻田 はじめに、「博報堂SXプロフェッショナルズ」についてご紹介させていただきます。博報堂DYグループでは、
- SDGs17アイコンの日本語コピー開発
- SDGs169TARGETSアイコンの日本語版制作
- 国連気候キャンペーンシンボルクリエイティブの開発
など、サステナビリティ普及啓発への取り組みとして、様々なクリエイティブボランティアに参加すると同時に、得意先企業のサステナビリティ経営に向けたビジネスソリューションの提供を行ってきました。それを担ってきたのが、2019年に活動を始めた「博報堂SDGsプロジェクト」です。
この5年間、プロジェクトの活動を通して、サステナビリティを推進する組織の創設や、チーフサステナビリティオフィサーという役職の新設、脱炭素目標、統合報告書の一般化など、大きな変化も目の当たりにしてきました。
その一方で、多くの企業では、取り組まなければならないことやコストが増え、そのコストを商品やサービスへの価値に反映できていないという課題が生まれました。
そうした企業が抱える課題に応えるために、私たちは「博報堂SDGsプロジェクト」という活動をさらに拡充し、「博報堂SXプロフェッショナルズ」という新たな名称で、企業のビジネスや社会の仕組みにおけるサステナビリティトランスフォーメーションを推進することにしました。
「博報堂SXプロフェッショナルズ」は、企業のサステナビリティへの取り組みを、生活者にとっての価値に転換すること、つまり生活者の心を動かす活動へと昇華させることで、経済的インパクトと社会的インパクトのダブルインパクトを実現しようと考えています。
社会全体のSXが進まない、あるいはビジネスの成果に繋がりにくい理由は、企業や自治体のサステナブルな取り組みが、生活者にとって十分な価値を生み出していないからです。
私たちは生活者価値デザインのプロフェッショナルとして、企業や自治体の取り組みを、生活者が実感できる、生活者の気持ちを動かす価値に転換・再設計します。そのために、いわゆる川上領域のパーパスや経営戦略から、川下領域のエグゼキューションまでを一貫して担い、生活者にとって、“買いたくなる、ファンになりたいと思う行動”を作っていきたいと思います。
サステナビリティを“コスト”から、ブランドへの“投資”に変換する。それは商品やサービスの付加価値化を意味し(BtoC)、社員にとっては働く意味を感じてもらうことにつながり(BtoE※)、共創パートナーと共通目標を持ち、求心力のある実装を可能にします(BtoB)。
※Business to Employeeの略。企業が従業員に対して商品やサービスを提供するビジネスモデル。
コンサルティング、マーケティング、クリエイティブ、PR、メディア、ツール/イベント制作といった各領域における約50名のプロフェッショナルが対応する「博報堂SXプロフェッショナルズ」をよろしくお願いします。
博報堂が目指すSX|ダブルインパクトストーリーを創造する
兎洞 企業や事業のパーパスを、生活者価値ストーリーへと転換することで社内を駆動し、最終的に生活者に価値を届けるということについてお話させていただきます。
皆様も実感していると思いますが、社内でサステナビリティを企業の活動として実装させていく時に直面するのが、本社部門と事業部門などの組織の分断と思考の対立だと思います。
経済インパクトと社会的インパクトを達成する思考モデル
“企業にとってのビジネス利益”と“社会インパクト”の関係を統合的かつ戦略的に構築するプロセスには、いろいろな壁が存在します。そうした課題を解決するために私たちが開発したのが「ダブルインパクト思考モデル」です。
「ダブルインパクト思考モデル」を活用する2つのポイント
この思考モデルには以下の2つのポイントがあります。
- 社会的インパクトと経済的インパクトをしっかり関係づけること
- 短中長期の時間軸でインパクトを精緻に設計すること
そして、流れを説明すると、次のようなモデルです。
- インパクトを与えたい対象に対して(ターゲット)
- 現在と将来の強みを用い、巻き込みたい共創相手とともに(リソース)
- 重要課題の解決を目指し(マテリアリティ)
- 具体的な企業活動を行い(事業アクション)
- 社会的インパクトと経済的インパクトの関係性を短期・中期・長期でしっかり考えて最終ゴール達目指していく(パーパス)
すでにいくつかの企業で、この思考モデルを活用してダブルインパクト戦略ストーリーを策定いただいています。
“目指す状態”の共有と、具体的な活動内容がどのように経済的インパクトと社会的インパクトにつながっていくのかがわかることで、サステナビリティ方針、マテリアリティ策定、目標数値設定、戦略的PR・コミュニケーション戦略策定のベースになります。
また、それだけでなく、社内の合意形成のツールとしても機能し、それぞれのステークホルダーの共感ポイントの議論に役立てることができます。
【事例】方針に基づいた具体的なシンボリックアクションの策定と実施
小田部 本日は、2つのクライアント事例を紹介させていただきます。
【事例】KFC|「KFCおいしナブルキッチン」
まず、「サステナビリティ方針からの生活者体験価値への展開」ということで、KFC(ケンタッキーフライドチキン)の事例ですが、大きく“活動基盤としての方針策定フェーズ”と“成果を生むための実装フェーズ”、2つのフェーズで進めました。
方針策定フェーズは、点になっている取組みをあらためて全体として可視化し、サステナビリティ方針という軸を通して繋げていくことにチャレンジし、「社会を元気にするレシピを。」という、サステナビリティの方針とステートメントを作りました。
詳細のマテリアリティの設定はもちろん、社会的インパクト、経済的インパクトに関してもセットで考え、実装につなげていくことを目指しました。
次に、実装フェーズですが、お客様にも参加いただき、オールKFCでブランド価値の向上につなげる核として “シンボリックアクション”を策定しました。生活者の意識の高まりを考慮して開発した施策が「KFCおいしナブルキッチン」という取組みです。
その名のとおり、みんなで一緒に作り、食べながら、地球や美味しい未来について考える、そんなプロジェクトです。自分ごと化を体験の中心に置く構造で、“問い→体験→答え”という3段階で実施しました。その結果、KFC本来のおいしさと、多様なサステナブル活動をシンボリックに体験していただくことができました。
【事例】JAL|「みんなで行こう、サステナブルな未来へ~JAL2030」
2つ目の事例は、「みんなで行こう、サステナブルな未来へ~JAL2030」という取り組みです。この取り組みは、現在、航空業界で課題とされているカーボンニュートラルを目指すアクションプランです。
フライトに伴う大量のCO2排出を低減するために“SAF=持続可能な航空燃料への代替”が叫ばれています。今回のアクションプランでは、利用者の皆さんにサステナブルなフライトとその価値を体験してもらうことを目指し、羽田から那覇までの2時間半のフライトを、サステナビリティについて学ぶ「空のSDGs大学」として体験設計しました。
フライト中のイベントはもちろん、現地到着後のミニツアー、ツアー後のワークショップなども盛り込み、次世代航空産業を構築するためのコミュニティづくりにも寄与しました。
レポート後編はこちらから⇒博報堂SXプロフェッショナルズが企業のサステナブルな取り組みを推進|ウェビナーレポート(後編)
博報堂グループでは、企業のサステナビリティ・トランスフォーメーション実現を目指すプロジェクト「博報堂SXプロフェッショナルズ」を提供しています。企業の経済インパクトと社会的インパクトの統合に資するソリューション開発や経営支援、事業開発支援、マーケティング支援などを行い、これからの持続可能な社会を支える次世代ビジネスモデルの創造に貢献します。 |

BIZ GARAGE 編集部
ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代。
BIZ GARAGEのコラムでは、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。
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