新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、生活は大きく変わりました。その代表が外出の自粛であり、実店舗に足を運ぶ人が減った代わりにECサイトを利用する人が増えました。
コロナ禍においてECサイトの運営が重要であるものの、「そもそもECサイトって何?」「ECサイト運営の具体的な業務内容は?」「ECサイトで成果を出す方法は?」など、疑問を抱えている人もいるでしょう。
そこで本記事では、ECサイトとは何か、具体的な業務や成果を出すためのポイントなどを紹介します。ぜひ参考にし、ECサイト運営に役立ててください。
目次
「ECサイト」とは何か?
「ECサイト」の「EC」は、「Electric Commerce(電子商取引)」の略称です。「Eコーマース」とも呼ばれ、インターネットショッピングを含む電子的な取引全般を意味します。
「ECサイト」は、そのようなEC(電子商取引・Eコマース)のための販売サイトを指します。つまり、インターネット上で商品の販売を行うネットショップを指すということです。
顧客が自分のパソコンやスマートフォンを使ってインターネット経由でECサイトにアクセスし、商品を選択してカートに入れ、購入するという流れが一般的です。
ECサイトの種類と特徴
「ECサイト」と一言で言っても、複数の種類があります。取引形態で見た場合、大きく3種類に分類できます。
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もともとBtoC、BtoB向けのECサイトが多かったのですが、最近ではメルカリやラクマ、ヤフオク!など、生活者同士で取引するCtoC向けECサイトも人気です。
さらに、ECサイトはその制作方法によっても分類可能です。
ECサイトのタイプ | 自由度 | 外部システムとの連携 | 専門知識は必要か | 初期費用 | 運用保守 |
モール型 |
× |
× |
不要 |
低額 |
不要 |
ASP型 |
△ |
× |
不要 |
低額 |
不要 |
パッケージ型 |
○ |
○ |
不要 |
高額 |
必要 |
オープンソース型 |
○ |
○ |
必要 |
低額~高額 |
必要 |
フルスクラッチ型 |
◎ |
○ |
必要 |
超高額 |
必要 |
ここからは、制作方法によって分類された上記5つのタイプについて、1つずつ見ていくことにします。
モール型
ショッピングモールと同じ形態のECサイトです。ショッピングモールは1つの施設のなかに複数の店舗が入っていますが、モール型ECサイトは、1つのECサイトのなかに複数のネットショップが入っています。
モール型ECサイトの場合、既に知名度が高く、多くのユーザーがアクセスしています。そのため集客がしやすく、モール自体の知名度から、ユーザーに信頼されやすいといえます。
またサイトの構築も簡単で、費用もあまりかかりません。初期投資を抑えて出店でき、すぐに販売できます。デメリットは、自店舗独自のカスタマイズがほとんどできない点です。モール内で他社との差別化がしにくいのが特徴です。
ASP型
ASP型は、ECサイトを作るために必要な機能がクラウド上に用意されており、それらを使って手軽にECサイトを作成・運営できる仕組みです。
モール型同様、構築は簡単で、費用もあまりかかりません。モール型に比べればややカスタマイズ性が高いですが、基本的にはASPで提供されている範囲の機能・デザインしか利用できません。
また、ASP外のサイトとの連携などはできないため、自社で独自のシステムを作り、連携したい場合などには不向きです。
パッケージ型
ECサイトに必要な基本機能が、パッケージとして提供されているタイプです。ベンダー各社から専用のソフトウェアを購入し、独自のECサイトを構築します。
パッケージ型の場合、モール型やASP型と異なり、独自のカスタマイズが可能です。他社との差別化を図りたい場合や、ブランド構築に力を入れたい場合などに適しています。このほか、規模の大きなサイトが構築可能、セキュリティ面で優れているというメリットもあります。
ただし、モール型・ASP型に比べて初期投資・運用費用は高額です。数百万円以上の初期費用が必要になり、さらに更新などの運用費用もかかるので、コストを抑えたい場合にはおすすめできません。
オープンソース型
パッケージ型と同様、専用のソフトウェアを使ってECサイトを構築します。パッケージ型との違いは、ソフトウェアのソースコードが無償で一般公開されていることです。
メリットはパッケージ型同様、カスタマイズ性が高いことです。パッケージ型のデメリットであった費用面も、オープンソース型は無料なため、解決できています。
ただし、オープンソース型を実際に運用するには専門知識・技術が必要です。それらの知識・技術を持った人材が社内にいない場合、外注しなくてはならなくなり、費用がかかってしまいます。
また、セキュリティ面なども自社で対応せざるを得ないため、専門知識のある技術者がいない場合にはおすすめできません。
フルスクラッチ型
フルスクラッチ型は、既存のソフトウェアやASPなどに頼らず、自社もしくは外注でゼロから独自にECサイトを開発するスタイルです。全くのゼロからサイトを構築していくので、好きなように機能やデザインを設計できます。
大規模なECサイトや、自前のモールを作ることも可能です。ブランド構築や顧客満足を追求する上で自由度が高いといえるでしょう。
デメリットは、初期費用が膨大にかかることと、開発に時間がかかることです。開発費用は安くても500万円以上はかかってしまい、開発期間は半年〜1年程度かかることが多いです。
また初期費用だけでなく、更新などの運用コストもかかります。自由度が高い分コストがかかり、年商数十億円規模のECサイトでない限り、赤字になってしまう可能性があります。
ECサイトの種類の選び方
ECサイトは制作方法によって5種類に分けられました。それぞれに特徴がありますが、まずは初期費用の相場と年商規模から絞り込むことも検討できます。
ECサイトのタイプ |
初期費用の相場 | 年商規模の目安 |
モール型 | 無料〜10万円以下 | 1億円未満 |
ASP型 | ||
パッケージ型 | 100万円〜500万円以下 | 1億円以上 |
オープンソース型 | 10万円〜500万円以下 | |
フルスクラッチ型 | 500万円以上 | 30億円以上 |
初期費用から考えると、年商1億円未満の場合はモール型かASP型が検討されます。
年商1億円〜30億円未満の場合にはフルスクラッチ型以外が検討できて、30億円以上の場合にはそれぞれの特性を踏まえて自由に選ぶのが良いでしょう。
ECサイトの運営業務
続いて、ECサイトの運営業務について見ていきます。ECサイトの運営業務は、下記の2種類に分けることが可能です。
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フロント業務はユーザーの目に触れる部分、つまりECサイトのデザインや広告・SEO、販売する商品の検討、キャンペーン施策の企画などを担当します。
バックエンド業務は、ユーザーの目に触れない部分の業務です。注文された商品の発送業務や売上の報告、顧客からの問い合わせやクレーム対応、在庫管理などが含まれます。
ECサイト運営の業務|フロント業務
まずはユーザーの目に触れる部分を担当するフロント業務について、詳しく見ていくことにします。
商品企画
ECサイト運営業務のなかで、最も重要な業務が商品企画です。どのような商品を企画するかで、ECサイトの売り上げは大きく変わります。企画された商品が魅力的でなかった場合、ほかの業務・施策をどれだけ頑張ったとしても、売り上げを伸ばすのは困難です。
失敗すると取り返しがつきにくいので、特に慎重に行う必要があります。市場のニーズやトレンドなどについて十分なリサーチを行い、見込まれる売り上げや原価、利益を計算した上で企画していきましょう。
仕入れ
企画された商品を仕入れます。仕入れも非常に重要で、在庫回転率を計算し、適切な数量を仕入れなくてはなりません。また、在庫が少なすぎることにもリスクがあります。
最近は、SNSの投稿などをきっかけに、商品が突然有名になってたくさん売れることがあります。もしそうなった場合、在庫がなくなってしまうことは大きな機会損失につながります。
そのような場合に追加の発注がすぐできる体制の構築や、複数の仕入れ先を用意しておくなどの工夫も必要です。
ECサイトの制作と管理
顧客目線に立ち、ユーザビリティを意識してサイトを制作しましょう。文字のフォントや大きさは読みやすいか、サイト構成はわかりやすいか、商品購入までの導線はややこしくないか、などは非常に重要です。
現在、多くのECサイトがインターネット上にあります。ユーザーはよほど興味がない限り、1つのサイトをじっくり見てくれません。以下のようなことがあると、その時点で離脱してしまう可能性があります。
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どれだけ商品が魅力的で自社ブランドにマッチしたデザインのサイトだったとしても、ユーザビリティを軽視すると、そもそも見てもらえなくなってしまう可能性があります。
また、新商品の登録やキャンペーン情報の紹介、季節に合わせて特別なページを作るなど、更新業務も重要です。
商品の撮影
ECサイトは便利ですが、実店舗と違って実際に商品を手に取って見ることができないという弱点があります。それを補うのが撮影です。
撮影を含めた「ささげ業務」(撮影・採寸・原稿)は、商品の売れ行きを左右する重要な作業とされ、細部まで工夫しておこなう必要があります。撮影では、特に以下の点に注意しましょう。
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マーケティング業務
ECサイトで実施することの多い、主要なマーケティング手段は以下の7つです。
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リスティング広告は、Googleなどの検索エンジンを使った際、検索結果に表示される広告です。キーワード検索を行っている、ある程度ニーズが明確で購買意欲の高い層にアプローチできます。
ディスプレイ広告はさまざまなWebサイトの広告枠に表示される広告です。まだニーズが明確になっていない潜在顧客へのアプローチが可能です。
アフィリエイトは、アフィリエイターが運営するWebサイトやブログなどに掲載してもらう手法で、一般的に費用対効果が高いとされています。
コンテンツマーケティングは、広告ではなくターゲット層が必要とする情報をWeb記事などのコンテンツで提供し、リード(見込み客)生成につなげる方法です。
SEOは、Googleなどの検索エンジンに評価され、検索結果で上位表示されるよう、サイト・コンテンツを最適化していく手法です。広告と比べ、成果が出始めるまでに時間がかかることが特徴です。
SNSマーケティングは、InstagramやTwitter、Facebookなどで商品のプロモーションをおこなうことを指します。
定期的にメールマガジンを発信することも、顧客を定着させていくことに役立ちます。これらの手法から効果が出そうなものを選択し、実施するのが主な業務です。
ECサイト運営の業務|バックエンド業務
続いて、ユーザーの目には触れない部分を担当するバックエンド業務について見ていきます。
商品情報の登録
まずは、販売する商品の基本情報の登録が必要です。登録する基本情報は主に以下の内容です。
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これらに、商品のキャッチコピーなどを加え、顧客が興味の湧く内容に仕上げます。また、検索カテゴリーも設定し、顧客が商品を探しやすくすることも大切です。
受注管理
顧客から商品の受注をいただいた場合、以下のような業務をおこないます。
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ここから顧客とのやり取りがスタートします。これ以降の業務でミスがあると顧客に迷惑をかけてしまうので、慎重に業務を進めることが必要です。業務を正確に、素早く行うことができれば、ECサイトへの信頼感が上がります。
在庫管理
在庫に過不足が生じないように管理する業務です。過剰在庫は経営に悪影響を与えますし、在庫不足で品切れになってしまえば、購入したい顧客がいても期待に応えることができません。
複数店舗を展開している企業などの場合、在庫管理システムのソフトウェアを導入し、ヒューマンエラーによる顧客満足低下を防止しているところもあります。
出荷業務(ピッキング・梱包・発送)
集荷指示に従い、倉庫から商品を集め(ピッキング)、梱包し、発送します。ピッキングでのミスは返送費用や顧客の負担を発生させ、顧客満足度低下やクレームの発生につながってしまいます。
梱包は、他社との差別化に役立ちます。梱包材を工夫したり、メッセージカードを添えたりすれば、イメージアップやリピートにつながる可能性が上がるでしょう。ただし、コストや手間で負担が大きくならないよう注意してください。
アフターサービス
アフターサービスの質は、リピーターの獲得に大きく影響します。具体的には、以下のような業務を行います。
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集客ももちろん大切ですが、一度購入いただいた顧客に質の高いアフターサービスを提供して満足度を上げ、リピートしてもらうことも大切です。
効率的なECサイト運営で成果を出すために
ECサイト運営の具体的な業務は多岐にわたります。効率的にECサイト運営で成果を出すにはどうしたら良いのでしょうか?
ここでは、ECサイト運営で求められているものと、ECサイト運営に役立つサービスを紹介します。
ECサイト運営に求められるもの
ECサイトの運営には、以下の4点が必要です。
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既述のとおり、ECサイトのタイプによっては、高額な初期費用がかかります。また初期費用以外に、運用コストも必要です。タイプによっては、ECサイトが完成するまでに数ヶ月単位の時間も要されます。
ECサイト運営の業務は多岐にわたるため、求められるスキルも複数です。
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これらのスキルを持った人材を確保し、規模や力を入れたい業務に合わせて適切に配置する必要があります。
トータルサポートのEC総合支援サービスもおすすめ
ECサイトの制作から運営業務まで、全てを自社で行うのが難しく感じる方もいるでしょう。そのような場合に役立つのが、博報堂グループの日本トータルテレマーケティングの「EC総合支援サービス」です。
ECサイトの制作から出荷作業、カスタマーサポートまで、プロが全行程をトータルでサポートしてくれます。プロの支援を受けながら売り上げアップのサイクルを作れますのでぜひ検討してみてください。
関連記事「中堅・中小企業がECの運営負荷を軽減し、売れ続けるECとするために必要なこと」を読む
まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大以降、ECサイトで商品を購入する生活者が増えています。ECサイトの運用を検討している企業は増えていますが、サイトのタイプによっては制作に多くの費用・時間がかかり、運営業務も多岐にわたります。
そんなECサイトの制作から運営業務までをトータルでサポートする「EC総合支援サービス」を利用するのも1つの方法です。本記事を参考に、ぜひ自社にあったECサイトの運営方法を見つけてください。

靏見 亮太(つるみ・りょうた)
日本トータルテレマーケティング株式会社 ECソリューション営業部 部長
大学卒業後、大手アパレル企業に入社しセレクトショップへの卸営業、直営店の運営を経験。その後、レディースアパレル、雑貨、コスメのEC事業運営会社に入社し営業、MDを経験。現在はEC運営事業者様向けに売り上げアップ、業務改善、品質改善を中心に多数のプロジェクトに従事。