最終更新日 2023.12.19

ウェビナーレポート|パーパス・バリュー起点の組織変革(前編)

2023年11月16日、企業理念やパーパス・バリューを起点にした強い組織づくりの取り組みを紹介するウェビナーを実施しました。実際に組織課題に取り組んだ現場担当者が登壇するということで、多くの方にご視聴いただきましたので、その模様をお伝えします。  

ウェビナーでは、アパレル分野で事業展開を行っている株式会社オンワードコーポレートデザイン 広報の三島氏と、組織を強くするクラウド型称賛カード「PRAISE CARD」の開発を担当したBIPROGY株式会社 グループマーケティング部企画推進室室長の小谷野氏が登壇。 

多様化する環境下で企業の組織改革が求められているなか、「成功循環モデル」を活用した取り組み事例について語っていただきました。 

登壇者(敬称略) 

  • 進行:依田 真幸(博報堂コンサルティング プロデューサー) 
  • ゲスト:三島 菜々子 氏(株式会社オンワードコーポレートデザイン 広報)、小谷野 圭司 氏(BIPROGY株式会社 グループマーケティング部企画推進室室長)
        

目次

はじめに

依田 本日は、「パーパス・バリュー起点の組織変革」と題しまして、セミナーを行ってまいります。今日は、「オンワードコーポレートデザインが遂行した成功循環モデルとは」という副題で、強い組織づくりに取り組んでいらっしゃる、株式会社オンワードコーポレートデザインの三島さん、BIPROGY株式会社の小谷野さんをお迎えして、具体的なお話ができればと思っています。 

昨今、強い組織を作るためにはパーパス策定が必要だという議論がありますし、同時に組織改革のためのコミュニケーション活性化ということに取り込まれている企業も多いと思いますが、好結果に繋がりにくいということもよく耳にします。本日はまず、強い組織の定義と「成功循環モデル」の概要をお話させていただき、その後、オンワードコーポレートデザインの実践例をご紹介したいと思います。 

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成果を生み出す強い組織とは? 

依田 まず、私どもが定義している成果を生み出す強い組織というのは、個人が自発的に行動して学習し合う自律的な組織です。 

PRAISECARD01具体的には、個人が組織の貢献感や成長実感を持つというところから始まり、自発的に行動する個人が増えていく、それによって学習し合う自立的な組織が出来上がる。そして、個人の柔軟な対応力が高まって組織が成長することによって継続的な成果に繋がっていくと考えています。  

強い組織を作る「成功循環モデル」 

依田 では、そのような強い組織を作るためには何から始めていけばいいのか?私どもが注目しているのは、「成功循環モデル」です。 

PRAISECARD02_2 「成功循環モデル」は以下の4つのステージから成ります。 

  1. 関係の質を上げる:個人の対話や交流を通じて、お互いの信頼が深まる。 
  2. 思考の質を上げる:多様な視点から、気づきが生まれる。 
  3. 行動の質を上げる:自発的に行動し、コラボレーションが進む。 
  4. 結果の質が上がる:結果が良くなる。 

つまり、「関係の質」から入ると、成功の循環が持続します。強い組織を作るためには、まず個人レベルでの思考や行動が必要で、それがすなわち、組織変革の原動力になるわけです。(参考文献/HCLT代表ヴィニート・ナイアー著「社員を大切にする会社」) 

「成功循環モデル」の発展的解釈 

依田 では、この「成功循環モデル」について、小谷野さんから詳しくご説明いただきたいと思います。 

小谷野 この「成功循環モデル」は、組織改革において非常に強力なツールだなと思う反面、一体何をすれば「関係の質」が良くなるんだろうという迷いもあると思います。ただ社員同士が仲良くすればいいのかと言うと、そういうわけではなくて、そこには厳しさも必要で、考え方はわかる自分の組織で実践しようと思うと難しいという声も聞かれます。 

PRAISECARD03 そこで、もう少し解像度を上げて、「関係の質」~「思考の質」~「行動の質」~「結果の質」という流れをどうやって発展させていけばいいのかという視点で、ゴールに到達するためのアクションを因数分解してみたいと思います。

いろいろ検証した結果、強い組織を作るために必要なアクションとして、15個のキーワードが見えてきました。「成功循環モデル」に沿いながら、順にご説明します。

まず「関係の質」のところは、「仲間意識」を高めて「一体感」を醸成し、お互い「助け合い」ながら「協力」することで新しい「シナジー」が生まれます。 

関係性が良くなってくると、自分の組織に閉じこもらないでちょっと越境してみようかなと考え始め、一緒にやって新しいことを考えてみようという「共創」が生まれ、1つステージが上がって「思考の質」に入っていきます。そうなると、隣の組織とも「対話」をするようになったり、相手の言うことをしっかり聞こうという「傾聴」の姿勢が生まれる。同時に、今まで見えてこなかった「問題が発見」できたり、新しい「アイディア」が生まれたりなど、「思考の質」がどんどん高まっていきます。

次に、「思考の質」が高まっていくと、いろんなことができそうだという気持ちが芽生えてくるので、今まで接触してこなかった人と繋がって「シナジー」を生み出したり、組織を「越境」して大きなことを考えてみたり、自分の組織だけだったらできない、もっと大きなことができるんじゃないかということで「未来志向」になって「ビジョナリー」になっていく。

そうなってくると、自分のそれまでの役割を超えた「役割外行動」を積極的にやるようになり、自分の価値観とか、企業のパーパス、バリューの実現に向け、前面に出て活動していく。そんな理想的な流れが生まれます。

「関係の質」から「思考の質」への流れに関して、もう少し詳しくお話すると、「関係の質」を良くするということは、結局、コミュニケーション強化で、“その場を温める”というような感覚かと思います。そして「思考の質」を高めることは、パーパス経営とか、ミッション、バリューといった企業理念を浸透させることと関係性が高いと思っています。「思考の質」を高めていくことは、自分自身の価値観と他人の価値観、そして企業の価値観とのギャップに気づくことでもあります。

なぜ、そのギャップが生まれたのかということを深掘りして考えていくことが「思考の質」を高めることになるのです。それゆえ、「思考の質」を高めることは、企業理念を浸透させることと非常に関係性が深いわけです。

PRAISECARD04次に注意したいのは、「関係の質」「思考の質」から「行動の質」「結果の質」に発展していく時は、下から上にまっすぐ流れていくのではなくて、いったん、個人や組織の価値観が、内省を通じて“腹落ち”し “自分ゴト化”する段階が必要だということです。 

つまり、「思考の質」から「行動の質」に繋がっていくときに、内省による気づきというところに集約されていることが、実はとても大事になってくるのです。

まず、コミュニケーションを強化して場を温めて、自分の価値観と他人の価値観、組織や企業の価値観を比較することで、なぜここにギャップが生まれてるのか、なぜ私は企業の価値観に共感できるのかということを考えて、企業理念が浸透し、同時に自分の価値観に気づいていく段階が、自発的に「行動の質」を高めていく時に意味を持ってきます。 

個人が、そのステージに到達すれば、あとは企業側がその人に対してチャンスを与えることで、どんどん行動するようになり、組織にとっていい結果が生まれるわけです。 

依田 ありがとうございます。まず「関係の質」の話に焦点を当てていきたいと思いますが、社内コミュニケーションに対する課題感ということでアンケートを取ると、4人に3人は課題があるという調査結果がありながら、どのように社内コミュニケーションを活性化したのかという質問に対しての回答の1位は、「特にない」という、とても残念な結果でした。 

PRAISECARD05 やはり、企業や組織が多様化していて、これをやればいいと一言で言えない時代になってきているのと、コミュニケーション活性化に関しても、迷いの時代に入っているのではないかと思います。 

そこで重要になってくるのが、組織を一体化させるためのコミュニケーション強化、「関係の質」から「思考の質」を高めるときに必要な「パーパス」という考え方です。皆さんも「パーパス」という言葉をトップダウンで与えられ、どのように考えていくかということに苦労した経験をお持ちだと思いますが、ここで、なぜ「パーパス」が必要なのかというお話を少しさせていただきます。 

「パーパス」は、その企業が存在し事業を営む、本質的な理由ということですが、リーマン・ショックの後、時代的に、企業の存在意義が問われたという背景がありました。要はリーマン・ショックの反省から、ただの利益主導ではなくて、企業はなぜ、その事業をやるのかという“意味”や“意義”が問い直されたわけです。 

パーパス経営に取り組む企業は、利益よりも、世の中をどうするのかとか、いかに自社の存在意義を果たすか、世の中の人に自分たちの価値をどう届けるかということを重視します。今、多くの企業がパーパス作りに取り組んでいますが、一方で、経営陣やパーパスを作る当人たちだけが意味をわかっていて、社員たちがついてこないという現状もあります。

PRAISECARD06ここに調査結果がありますが、パーパスを作る過程に関与した人のうち、パーパスに共感した人の割合が高いのはそういうことで、やはり社員の共感度を高めながらパーパスを作ることが大事になってきているのです。

また、自分の価値観と企業のパーパスが重なっている人は、会社のパーパスと自分の働く意義が重なっていると回答していて、逆に重なっていないと離職していく社員も増えていくことになります。 

 

レポート後編はこちらから
⇒ウェビナーレポート|パーパス・バリュー起点の組織変革(後編)

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BIZ GARAGE 編集部

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