最終更新日 2023.10.13

「顧客の囲い込み」におけるSMS活用の可能性

日本における人口減少や市場競争環境の激化を背景に、企業にとって新規顧客の獲得がどんどん難しくなってきているいま「顧客の囲い込み」は最優先すべき課題となっています。

各企業は様々なツールを駆使し顧客と接点を持ち続けようとしていますが、その1つの選択肢としてSMS(ショートメッセージサービス)が注目を集めていることをご存知でしょうか?

この記事ではなぜいまSMSなのか、他のツールとどのように使い分ければいいのかについて事例を交えながら解説していきます。

目次

どうすれば顧客との最適なつながりを作れるのか?

「お客様のEメールアドレスを集めて、メルマガを送っている」「ファンを増やすために公式LINEをはじめた」「顧客に確実に情報を届けるために、紙DMを使用している」など、さまざまな施策を展開されている中、だんだん効果を感じにくくなったり、運用体制や費用も高額で継続していくのが難しい、などの悩みを抱えていらっしゃるマーケティング担当者も多いのではないでしょうか。

それぞれのツールには顧客接点としての強みと弱みがあります。ツールごとに特徴をとらえて顧客接点を設計していくことで、顧客とのより良い関係を築いていくことが可能になります。img_01

そして顧客接点としてもうひとつ忘れてはならないのが電話です。電話番号は住所と同様に企業の顧客データの中に必ずと言っていいほど登録されているものになりますし、一人が複数持つことはまれです。しかし、何か大切な用事でもない限り企業から顧客に対して電話をすることはないので、プロモーションで利用されることはほとんどありません。

この“電話”がここ数年で大きな変化をとげています。固定電話から携帯電話への急激なシフトにより、いまやシニアの携帯保有率も9割を超えています。企業に登録される顧客データも現在では9割以上が携帯電話であるという企業も少なくはありません。

また、昔はキャリアを変えるたびに携帯の番号がころころ変わるという時代もありましたが、2021年よりMNP転出手数料が原則無料化になり、携帯電話番号は住所以上にずっと変わらない最強の個人情報になっています。

そんな中で、携帯電話番号を使ったコミュニケーション手段として“SMS”が注目を集めています。SMSをEメール・LINE・紙DMとならぶ第4の顧客接点として検討に入れることで、いままで解決できなかった課題が解決される可能性が広がります。

SMSを取り入れて最適な顧客接点ポートフォリオを

SMSが注目されるようになったのは、前章で説明した携帯電話が全世代にリーチできる最強の個人情報になったという背景の他に、SMSの圧倒的デメリットが技術的に克服されたという経緯があります。

そのデメリットは“SMSが通信回線を使って配信されているという特性上、1通あたり70文字以内しか送れない”ことです。70文字だと丁寧な文面は書けませんし、URLを入れることも困難です。また、宣伝広告で活用しようとすると「特定電子メール法」の範疇内になりますので「配信停止はこちら」というオプトアウトを入れる必要があり、そうすると70文字以内に収めることはさらに困難になります。

ですので、これまではSMSが活用されるとしても「重要な案内」「督促」「認証」のような領域での利用に限られていました。しかし技術の進化により、長文のSMSが配信できるようになり、プロモーションでもSMSが活用できるようになってきたのです。では、先ほどと同様の視点で、SMSの強みと弱みを整理してみましょう。

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SMSは紙DMと同様に顧客に確実に届けることができる一方、紙DMとは違いビジュアル訴求ができません。長文が可能とはいえ、効果を考えると200文字くらいに抑えることをお勧めしていますので、短い文章で顧客を惹きつける必要があります。

実はそれこそが最大の特徴になっており、短文だからこそ、興味を持ってもらえればWebアクセスや電話というアクションに結びつきやすいという性質を持っているのです。これらを踏まえて各顧客接点ツールをどのように使い分けると良いか、一般的には以下のように整理できます。

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SMSは短文でパーソナライズされた情報を届けることで反射的にアクションしてもらえるような、つまり「アクション誘導型」ツールと考えると使い道が見えてきます。

企業の業態や顧客情報の取得情報により重心を置くべきツールは変わってきますし、これらの課題を一気に解決することを目的としてアプリを導入する企業も増えてきていますので、一概には言えませんが、特に自動車販売・インフラ・通販・不動産・美容のような業界ではSMSが担える役割が大きくなってきています。

SMSは先ほど記載した通り「抵抗がある顧客もいる」という弱点があるのも事実です。SMSはかなりパーソナルな領域なので抵抗感を感じるということですが、それは裏を返すと「見てもらいやすい」ということです。我々の調査ではSMSの未読数は、EメールやLINEと比較して格段に少ないという結果もでています。つまり、いかに顧客に受け入れられるようなSMSを配信できるかがとても大切な戦略になります。

SMS配信戦略事例

「生活者理解の高度化」「意思決定の最適化」「施策の制御」

博報堂は顧客接点としてSMSを活用していくことに対して大きな可能性を感じ、いち早く専門チームを立ち上げて、これまで300社以上の企業様に対してSMSの導入を支援してまいりました。ソリューションを提供するだけではなく、運用方法や配信文面についてもコンサルティングさせていただいております。本記事では、業界ごとの代表的なSMS配信戦略をご紹介いたします。

①自動車販売業界

自動車販売業界は車を売って終わりではなく、その後のアフターメンテナンス・ファイナンス・保険・買い替えと顧客とのリレーションが非常に重要です。
来店後のアンケート/点検・車検のご案内/来店のリマインド/キャンペーン告知などをすべてSMSで行うことで、SMSをお客様との強力な接点として活用されている企業様もあります。

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②不動産業界

不動産業界では顧客の検討期間が長期化するのでいかに関係を取り続けるかが重要になってきます。物件にエントリーいただいたお客様に対してギャラリーへ誘導したり、新しい物件やセミナーをSMSで案内したりすることで、継続した関係を取り続けている企業様もあります。

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③通販業界/美容業界

通販や美容業界は顧客の獲得・休眠顧客の掘り起こしが非常に重要です。そのため、紙DMを多用していた業界でしたが、紙DMを送った後にSMSを送るなど、顧客接点をうまく組み合わせることで効果を上げている企業様もあります。

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④インフラ業界

さまざまな企業様が顧客の囲い込みを目的として会員サイトの開設や、自社アプリを展開していますが、インフラ業界は特に顧客のトータルライフサポートを打ち出しており、会員サイトへの誘引が重要となっています。会員サイトへの誘引(ログイン)を目的としてSMSを活用するケースも出てきています。

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SMSマーケティングの展望

今回の記事では、顧客接点としてのEメール・LINE・紙DMの特性について解説したうえで、第4の選択肢としてSMSを顧客接点のポートフォリオに組み込むことでマーケティングを飛躍的に効率化できる可能性があることをご説明しました。

また近年、携帯電話番号をキーとした文字だけではない「リッチメッセージ」を配信できる技術も進歩してきており、企業の顧客接点の作り方がより多様になってきています。博報堂では300社を超えるSMS導入コンサルティング経験により、各企業様に最適な顧客接点の作り方をご提案いたします。専門チームで対応させていただきますので、ぜひお声掛けください。

金野 敏和 (1)

金野 敏和(かねの としかず)

株式会社博報堂 gmove

2005年博報堂入社。自動車業界・流通業界などでビジネスプロデューサーとして活動後、現在は博報堂顧客接点専門チーム「gmove」の代表としてSMSソリューションをはじめ、様々なソリューション・サービスを開発している。

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