最終更新日 2023.11.11

ライブコマースの可能性を拡張し、ブランド成長につなげる

リアルタイムでユーザーと対話し、その場で商品を購入できるライブコマース。コロナ禍におけるオンライン接客ニーズの高まりを受け「新たな購買体験を実現する手法」として、さらなる注目を集めています。そして、ライブコマースの第二次ブームといえる今、活用できるカテゴリや活用法の幅も広がっています。

本記事では、企業や商品の魅力を伝え、商品購買につなげるための企画や仕組みの重要性など、ソリューション開発の背景についてご紹介します。

目次

新たな顧客接点として注目されるライブコマース

“売れる施策”として注目を集めたライブコマース

ライブコマースとは、インターネットを使ったライブ配信と、Eコマースを組み合わせた販売手法のこと。配信者とユーザーがリアルタイムでコミュニケーションを取りながら商品理解を深めることで、商品購買へとつなげていくことができます。

2010年代前半に中国で爆発的に流行し、1日に数十億円もの売上を達成したこともあります。それが世界に広がり、日本では2017年から2018年頃にかけて“売れる施策”として注目を集め、ブームのような盛り上がりを見せました。

しかし、店舗で購入する文化が浸透している日本では、わざわざライブコマースで購入する理由を作り出すことが難しかったことに加え、ブランド全体としてのライブコマース活用戦略を策定する主体も少なかったことから、“売れる施策”としての過度な期待値に応えきれずに、その盛り上がりは一度終焉を迎えました。

関連記事:ライブコマースとは?日本の市場動向・メリット・成功する分野を解説

生活者の変化に対応した「新たな購買体験を創出する装置」として再注目

コロナ禍は生活者の購買行動に大きな変化をもたらしました。非接触の販売・接客ニーズが高まった結果、ライブコマースは再び注目を集めることになります。店舗というタッチポイントが機能しにくくなり、各企業が「顧客との接点をオンラインで維持する方法」を模索し始めました。このニーズと、ライブコマースの強みである「リアルタイムでユーザーと対話できる」というインタラクティブ性がマッチしたことが、第二次ブーム到来の大きな要因になっています。

また、新たな視点で見ると「第二次ブーム」が一過性のものではないように思えます。機能訴求やCRM施策の飽和により、ユーザーがブランドとの関係を保ちにくくなっているだけでなく、さまざまなコンテンツやソーシャルメディアの普及で、ユーザーの可処分時間が減っています。ブランドとのコミュニケーションに充てられる時間が削られている中で、ユーザーの心に留まるようなコミュニケーションやタッチポイントを創出することに、各社は苦心されているかと思われます

そこで注目されているのが「ヒト消費」や「コト消費」と呼ばれる、商品を紹介する人やブランドの関係者・ブランドが提供する体験を重視する購買行動です。

自分の好きな人(インフルエンサーなど)やブランドとリアルタイムで交流できるライブコマースは、「ヒト消費」「コト消費」の源泉となり、ブランドがユーザーとの関係を維持するのに貢献する手法でもあるのです。

ブランド体験と購買体験を一体化するソリューション

集客と購買を両立する企画がポイント

ライブコマースを始める際、企業側の主な課題は2つあります。1つは集客の難しさです。ライブコマースの集客源は、「配信者の生配信が見たい」「配信者とコメントを通じてつながれるかも」と思うファンがメインであり、そうしたファンの興味を引くような企画でなければ集客は望めません。

もう1つは、ユーザーが持つ「配信者への興味」を「ブランドへのエンゲージメント」に変換する難しさです。配信者との交流の中で、いかに自然にブランドの魅力を理解してもらうかがとても重要になってきます。

私たちが企画を立てるときには、まず「配信者のファンがどの部分に魅力を感じているか」を徹底的にリサーチします。その後、商品・ブランドの魅力と配信者の接点を探ります。こういった工程を丁寧に進め、その精度を高めていくことが、ライブコマースを企画する上での難しさであり、奥深さでもあるのです。

売上の先にあるブランド成長を見据えた取り組み

商品の魅力に対する理解度を深め、かつ購入したいと思えるインセンティブやオファーを設定することによって初めて、ライブ配信でモノが売れるという状況が完成します。その前提を踏まえた上での企画の立て方や、PDCAを設計することが非常に重要です。また、「その後のブランドとユーザーの関わり方がどう変わったか」「ライブコマースによって生活者の行動がどう変わったか」という視点で施策を振り返ることも重要です。

ライブコマースの多面的な価値

また、ユーザーとのインタラクティブな対話を可能にするライブコマースを、ただのユーザー獲得手法やモノを売ることをだけを追求する手法と捉えてしまうのは、非常にもったいないことです。ユーザー獲得や売上の先にあるブランドの成長を、ライブコマースが達成するという設計をしなければならないと思います。

それを体現するのが「フルファネル型ライブコマース」という構想です。これは、目的を「配信を通じた売上獲得」にとどめず、顧客のロイヤル化までを見据えた、事業成長に貢献するライブコマースのことを指します。

私たちHAKUHODO Live Commerce+は、このフルファネル型ライブコマースを実現するための企画設計はもちろん、キャスティング・配信媒体選定・告知設計・配信実装・効果測定までをトータルサポートします。メンバーには、コマース領域で実績のあるクリエイターや事業領域に明るいコンサルタントがおり、それらを中心とした「事業成長へのコミットを志向したライブコマース提案」が強みです。

事業成長へのコミットを志向したライブコマース提案

ライブコマース事例紹介

PR的発想で始まったライブコマースプロジェクトを、ユーザーの継続的なECサイト来訪につなげる施策に転換

PR的な発想で始まった某化粧品企業のライブコマースプロジェクトでは、最終的には視点を広げ、「フルファネル型ライブコマース」を実践できました。企画をスポット的な「打上花火」で終わらせず、ユーザーがECサイトをより継続的に訪れるきっかけになる企画として設計し、実際に狙った行動が起きているかの効果分析も行いました。

企画としては、ジャンルをまたいだファッションや「推し活」などと、化粧品をリンクさせて訴求しました。ファッションデザイナーが選んだコーデと、クライアントの化粧品を用いたメイクを組み合わせて、「このコーデにはこのメイクが合います」という形で出演者が紹介することで、出演者のフォロワーがコーデに注目。配信を見ているうちに、自然な形で「このコーデに合うメイク・コスメはこれ」と感情が動き、クライアントの商品に興味を徐々に移していく設計です。インセンティブとして、紹介されたコーデもプレゼントし、コスメも割引価格で提供することで、「ライブ配信で商品を購入する理由」を作ることにも成功しました。

成功に至ったポイントは、出演者がなぜファン(フォロワー)に支持されているかをしっかりと理解した上で、なるべく自然に商品への興味に落とし込むという、滑らかな設計ができたことです。ライブ視聴者のサイト来訪頻度や購入単価は上昇し、紹介商品の売上もベースアップを確認することができました。

化粧品とファッションを組み合わせたライブコマースをやったことで、「自分が化粧品を使ってどう変われるか」をユーザー自身がリアリティをもって実感した結果、狙い通りにライブコマース以降の顧客行動の変化にコミットできたわけです。「配信者が実際に使っている」と紹介された商品は売れ行きが良く、配信者の商品への熱量が商品売上に大きく作用するということも確認できました。

究極に嘘のないマーケティング手法がもたらす可能性

生活者とブランドの良質な接点としてさらなる進化へ

商品情報や口コミにアクセスしやすくなった昨今、生活者が商品を選ぶ際の基準はどんどん厳しくなっています。生配信という、嘘がつけない状況で商品の魅力を伝えられるライブコマースは、そんな生活者の変化に対応した手法なのです。

しかし、「一晩でいくら売り上げるか」といった印象が、ライブコマースにはまだまだ根強くつきまとっています。だからこそ、フルファネル型ライブコマースを通じて、「生活者とブランドの良質な出会い」と継続的な接点を創出していきたいと考えています。

ライブコマースは、ブランドと出会い続ける場、ユーザーとつながり続ける場として活用される可能性を秘めています。HAKUHODO Live Commerce+として、クライアント企業や、ライブコマースに関わるさまざまなプレイヤーとともにその可能性を広げていきたいと考えています。

澤田 航太(さわだ こうた)

澤田 航太(さわだ こうた)

HAKUHODO EC+ コンサルタント
ショッパーマーケティング事業局 マーケティングプラニングディレクター

2017年に博報堂に入社。営業・メディアプラナーを経て現職。EC事業の中長期戦略策定・D2Cブランド立上げ・ECチャネル戦略策定など、ECを起点として事業プランニングを担当。

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