最終更新日 2023.12.11

商品購入の「最後の一押し!」インストアマーチャンダイジングが重要な理由

「インストアマーチャンダイジング」は、リアル店舗における商品の陳列や配置を工夫することで、売上の最大化を目指す販促手段を指します。EC隆盛の現代の商業界においても、まだまだリアル店舗での購入が主流なジャンルもあります。

また、インストアマーチャンダイジングは、メーカー担当者にとって、リアル店舗における自社商品の売上アップを狙える重要な施策です。

本記事ではインストアマーチャンダイジングとは何か、なぜ今それが求められているのか、実践する際の重要なポイントなどを紹介していきます。

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目次

「インストアマーチャンダイジング」とは何か

「インストアマーチャンダイジング(in-store merchandising)」とは、小売店舗における商品や陳列、アイテム構成比などを客観的に検討し、収益を最大化するための業務を指します。

リアル店舗において、店内のレイアウトやデザイン、POP(ポップ広告)などは、顧客の視覚に訴えかける重要な販促手段です。インストアマーチャンダイジングとは、店舗全体の売上アップを狙う上で重要な店舗設計を指し、メーカーと小売店双方が日夜努力している活動なのです。

インストアマーチャンダイジングのメリット

的確なインストアマーチャンダイジングを行うことができれば、小売店・メーカーにとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

1点目に、客単価アップが狙えることが挙げられます。小売店の業態にもよりますが、特に日常使いする食品スーパーやドラッグストアでは、顧客は「ついで買い」をする傾向があります。ついで買いとは、事前に購入すると決めた商品以外のものを買うことを指します。このついで買いは、店舗レイアウトやアイテム構成の工夫などで誘発できます。

例えば、今日は「ぶり」を買おうと考えている来店者の頭の中には、「ぶり大根」「ぶりの煮付け」などさまざまなレシピが浮かびます。そうした来店者の潜在意識に働きかけるように、ぶりコーナーの横で大根やネギ、煮付けのタレなどの関連アイテムを販売し、ついで買いを誘うことで、買い物金額アップが狙えます。

2点目に、 CMやキャンペーンと連動させることで、メーカーのマーケティング施策と相乗効果を生み出す点が挙げられます。

例えば、スポーツ用品メーカーが新しいランニングシューズを発売する際、店舗内で魅力的なディスプレイやPOPを活用し、店員のアドバイスを通じて商品を効果的に展示します。これにより、テレビCMやキャンペーンでの認知度を店舗で具体的な行動に結びつけ、購買意欲を高めることが可能です。また、常に売り場に接しているスタッフは、生活者のニーズを理解しやすいので、地域の気候や嗜好に合った商品を特別なプロモーションとして展開し、顧客の興味を引きつけられます。

インストアマーチャンダイジングの種類

インストアマーチャンダイジングには、主に以下の4つの種類があります。

インストアプロモーション

インストアプロモーションとは、店内で行うさまざまな割引施策や実演販売、キャンペーンなどの販促活動を指します。

大きく分けると、増量販売や特売などの「お得感」を演出する「価格主導型インストアプロモーション」と、実演販売やサイネージなどで来店者に「ベネフィット」を演出する「非価格主導型インストアプロモーション」の2つが挙げられます。

スペースアロケーション

スペースアロケーションとは、アイテムの陳列方法や来店者の購入動線などを工夫することで、売上の最大化を目指す施策です。

 来店者は普段の買い物において、無意識に店内を回遊しているように思えますが、実は買い物かごの大きさや予算などから無自覚に計算して買い物をする傾向にあります。そうした来店者に対して、食品スーパーでは例えば冷凍食品や惣菜商品といった「温度」が大切な商品群をレジ近くに陳列することで突発的な購買欲求に応えるなど、買い物金額アップを狙っているのです。

シェルフマネジメント

シェルフマネジメントとは、商品の特性に応じて陳列棚の配置を最適化することを指します。例えば、店舗の売上構成比が高いアイテムを視界に入りやすい場所に配置して購入率アップを狙ったり、子供向けのお菓子などは子供が手に取りやすいように最下段に陳列したりする手法です。

ワンウェイコントロール

ワンウェイコントロールとは、来店者の店舗内での回遊経路を計算する手法を指します。店内を見て回る来店者に対して、購入予定がなかった商品を販促物などで効果的に訴求したり、自社ブランドの世界観を見せる売場を回遊経路に展開して、認知・理解させて購買を促す施策を指します。

インストアマーチャンダイジングが求められる理由

インストアマーチャンダイジングは、小売店に一任されている場合が多いですが、メーカーや卸業者が間に入って、マーチャンダイジング支援を行うことも可能です。

特にメーカーにしてみれば、少しでも自社の商品を来店者に手に取ってもらいやすい位置に置きたいはずです。なぜインストアマーチャンダイジングが求められているのか、その理由を見ていきましょう。

リアル店舗では衝動買いが主流

マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した調査によると、来店する前に購入する銘柄を決めている買い物客は約15%、つまり残りの85%は衝動買いによって商品を選んでいるといいます。また、購入決断に至るまでの時間は7秒以内(大手消費財メーカーが2004年に提唱した購買モデルより)とさえいわれています。

食品スーパーやドラッグストアに商品を卸すメーカーにとっては、そうした衝動買いニーズにいかに応えるかが生命線だといっても過言ではありません。リアル店舗におけるインストアマーチャンダイジングは、競合に打ち勝つための重要な販促手段になり得るのです。

他のマーケティング施策と相乗効果

インストアマーチャンダイジングは、広告施策などのマーケティング施策と相乗効果があります。テレビCMやオンライン広告といったメディアを活用したマーケティング施策は、広範な視聴者に向けてブランドの認知度を高めることに優れています。

しかし、こうした施策は一時的なインパクトを与えるものであり、消費者が実際に商品を手に取る行動に結びつけることは難しい場合があります。

 ここで、インストアマーチャンダイジングが重要な役割を果たします。店舗内で商品を魅力的にディスプレイし、特別な陳列やプロモーションを行うことで、消費者が商品に興味を持ち、購買意欲が高まります。総合的に見ると、インストアマーチャンダイジングは他のマーケティング施策との相乗効果を最大限に引き出し、ブランドの成長と顧客満足度の向上に不可欠な手法となのです。

 また、特に日本においては「食品」「医薬品」といったカテゴリーの商品群は、リアル店舗での購入が根強く、EC比率が高くありません。そうした環境においてリアル店舗でいかに効果的なマーケティング施策を打っていけるかは、メーカーにとっても小売店にとっても、重要なポイントになっているのです。

インストアマーチャンダイジングの実践ポイント

次に、実際にメーカー担当者が留意すべきインストアマーチャンダイジングのポイントについて説明していきます。

大前提として、店舗で自社の商品戦略が実践されているかチェックすることが大切です。陳列方法・位置を小売チェーン本部に指示していたとしても、実際には店舗によって陳列に変更がなかったり、キャンペーンハガキが置かれていなかったりするケースもあります。

そうした事態を防ぐためには、インストアマーチャンダイジングを含めた販売戦略が実行されているか確認し、行われていないようであれば各店舗の売り場担当者や店長と、本部から来ている指示について確認することや、小売本部に対して再度指示を出してもらうように働きかけることが肝要です。

インストアプロモーション:商品特性に応じた販促

インストアプロモーションにおいては、「商品特性に応じた販促」を意識しましょう。例えば、日持ちしない生鮮食品はシンプルに値下げ、お酒やカップラーメンなど消費期限が長く、まとめ買いされやすい商品は「バンドル販売(まとめて購入すると割引対象になる手法)」など、商品によって実践すべき販促方法が異なります。

非価格型のインストアプロモーションは、販売する側と来店者、双方の課題解決となるような売場を演出しましょう。例えば、在庫処理をしたい商品は通路に平台を設置して来店者の目に留まりやすく足を止めてもらったり、売り出したい旬の食品を訴求する際には「実演販売(試食付き)」、夕食の献立に迷っている来店者にはレシピ動画を放映する「サイネージ」などが効果的です。

スペースアロケーション:面積あたりの売上最大化

スペースアロケーションにおいては、面積あたりの売上最大化を目的にしましょう。これはスペースを闇雲に詰め、できるだけ多くのアイテムを陳列すればよいというわけではありません。ゴンドラの種類や陳列可能アイテム数、商圏の人口特性などを踏まえた上で、どのような店舗レイアウトに設計すれば売上が最大化するのかを考えていきましょう。

シェルフマネジメント:商品特性に応じた陳列

シェルフマネジメントでは、商品特性に応じた陳列に留意しましょう。例えば、冷凍食品を販売する冷凍平台ケースとリーチインケースでは、陳列する商品を変えるべきです。冷凍平台ケースは来店者が商品を見やすく、扉も開けやすいので、比較的大容量の商品を販売する一方で、リーチインケースは扉が重いため、単価が高い商品を訴求するなどの方法があります。

つまり、商品特性とゴンドラ、陳列棚の特性を考慮し、「どの商品をどの陳列棚に置けば売上が最大化するのか」を考えるべきです。そのためには、店舗全体を「鳥の眼」で俯瞰し、陳列する商品を「虫の眼」で捉えることが必要です。

特に、メーカー担当者は自社商品の陳列位置やレイアウトなどを、実際の店舗を回って確認しましょう。

ワンウェイコントロール:長距離を歩いてもらう設計

ワンウェイコントロールでは、来店者に「いかに長い距離を歩いてもらうか」を意識した設計を施しましょう。

一般的に、来店者が店内を回遊する距離が長ければ長いほど、買い上げ点数が上がるとされています。店内の奥まで誘導しやすくしたり、角を曲がった先で次の売場が目に入りやすくしたりするなど、次々に目に入る売場を分かりやすく魅力的にする設計が必要です。

また、特売品などの目玉商品を陳列することで、来店者の視線を釘付けにし、滞在時間を延ばす取り組みも有効です。滞在時間が伸長すればするほど、買い上げ点数がアップし、来店頻度も向上します。

まとめ

本記事では、小売店・メーカーにとって重要な、リアル店舗における販促手段である「インストアマーチャンダイジング」について紹介しました。インストアマーチャンダイジングは、ECが広がる前からある販促手段で、非常に古典的ですが、リアル店舗での売上を伸ばす上でとても重要な取り組みです。

また、来店者はリアル店舗での買い物の際に、「必要なものを買う」こととは別に、「買い物を楽しむ」ことを無自覚に目的化しながら、来店しているものです。

そういった意味では、効果的なインストアマーチャンダイジングの実践は、単に売上アップにつながるだけでなく、店舗のファンづくりという視点でも重要になっています。さらに、小売チェーンに商品を卸すメーカーにとっても、少しの工夫と営業努力で、自社の店舗売上が伸びる施策になっています。

博報堂が提供するインストアマーチャンダイジングソリューションは、経験豊富なスタッフが実践的なトレーニング・OJTでスキルの底上げ・平準化を支援することで、高い実行力を備えたリアル店舗への巡回営業を実現。販促施策を成功させ、商品の店頭露出を高めることができます。インストアマーチャンダイジング施策でお困りの方がいらっしゃったら、ぜひご参考にしてください。

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BIZ GARAGE 編集部

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