2023.07.07

AI導入のプロセスを解説!メリット・デメリットと業界別事例も紹介

近年、ビジネスにAIを活用している企業が増えています。AIを活用することで、これまで不可能だった問題解決が実現できるため、導入を検討している社内担当者も多いでしょう。

しかし、実際にどのような方法で、自社にAIを導入できるのか分からないといった疑問を持っている人もいるかもしれません。

そこで今回は、AIについての基本概要と導入のプロセス、メリット・デメリットを解説し、業界別のAI導入事例を紹介します。

目次

AIとは?基本概要と導入の現状

AIを導入する前に、AIの基本概要を押さえていきましょう。ここでは、以下3つの観点から、AIについて解説していきます。

  • AIとは
  • AIでできること
  • AI導入の現状

AIとは

AI(Artificial Intelligence)とは、人工知能のことで、コンピューターや機械が人間の知能を模倣し、学習・推論・判断などの知的なタスクを実行できるシステムです。ただし、AIの定義は専門家によって解釈が異なるため、明確に決められたものではありません。

AIは機械学習やディープラーニングなどの技術を用いて、大量のデータを解析し、問題解決やパターン認識を行います。近年、急速に発展を遂げている分野で、AIの活用により、ビジネスの効率化や新たな価値の創出ができることが予測されています。

AIでできること

AI(人工知能)はさまざまな分野で実用化されています。AIによって行われている業務の例を、下表にまとめました。

画像認識 

顔認証や物体検出など、画像から特徴を抽出し、識別・分類をする 

音声認識 

音声アシスタントや音声翻訳など、人間の音声をテキストに変換し、理解・応答をする 

自然言語処理 

チャットボットや検索エンジンなど、テキストデータを解析し、意味や感情を把握する 

推薦システム 

個々のユーザーの好みや行動をもとに、関連性の高いコンテンツや商品を提案する 

予測分析 

データを解析し、将来の傾向や需要を予測する 

機械制御 

自動車運転、産業用ロボットや建設機械などを制御する 

上記のように、AIが活用されている分野は、自動運転車・音声認識・画像認識・自然言語処理・推薦システムなど多岐に渡ります。

AI導入の現状

現在、多くの企業や業界でAI導入が進んでいます。しかし、日本の企業のAI導入状況は24.3%に留まります。これをみると、AIを導入している企業は少数派で、まだAIが浸透しているとは言い難い状況です。

導入している企業は、従業員の負担軽減など業務効率化の向上としてAIを活用しています。このことから、AIが業務の補助的な役割を担っていることが分かります。将来的にはAI技術の進化にともない、担う業務も変化していくでしょう。

出典:令和3年「情報通信に関する現状報告」|総務省

AI導入の3つのプロセス

実際に、AIを導入するときにはどのようなプロセスで進むのでしょうか。ここでは、AI導入のプロセスを以下3つに分けて解説します。

  • AIの導入目的を定める
  • AIモデルを開発する
  • AIを運用・保守する

AIの導入目的を定める

AI導入の第一歩は、明確な目的を設定することです。AI技術を活用して、どのような課題を解決し、どのような価値を創出していくかを明確にしていきます。競合分析・市場調査などを活用し、自社が解決したい問題を発見しましょう。

課題解決のための業務内で、AIの活用範囲と人が作業する範囲を区別しておくことも大切です。経営陣や関係部門と連携し、実務に沿った導入目的を定めていきましょう。

AIモデルを開発する

目的が策定されたら、AIモデルの開発に移ります。自社の抱える課題解決の要件を満たすAIモデルを開発することが大切です。

AIモデル開発プロセスでは、まず、データ収集・前処理を行い、モデル学習に適した形にデータを整理していきます。その後、選択したアルゴリズムに基づいてモデルを学習・訓練させたのち、モデルの性能評価・チューニングを行っていくと、目的に適ったAIモデルが完成します。

開発のプロセスでは、AIの専門知識を持つ人材が必要不可欠であるため、外注する企業も少なくありません。

AIを運用・保守する

AIモデルが開発されたら、運用・保守のプロセスに移行します。まずは試験運転を実施し、使用範囲を限定してAIの導入効果を測定します。このとき、AIの精度を検証し、自社の業務に適合するかも確認していくことが重要です。

AIの導入効果が見込めると判断できれば、実際の運用に入ります。運用のプロセスでは、社内システムとAIの連携、利用する従業員の教育、メンテナンス人員の配置など、さまざまな業務が発生する可能性があります。AI活用のための、人員・予算・資材といったリソースを確保しておく必要があるでしょう。

AI導入のメリット

企業がAIを導入すると、さまざまなメリットが得られます。ここでは、AI導入の主なメリット5つを、詳しく紹介していきます。

  • 生産性が向上する
  • 顧客満足度が向上する
  • 事故発生を防止できる
  • 人件費の削減ができる
  • 業務の質を改善できる

生産性が向上する

AI導入のメリットの1つ目は、生産性が向上することです。AIは、膨大なデータを高速に処理できるため、人が担っている繰り返しの単純作業を代替えすることで、プロセスの効率化が実現でき、生産性が高められるでしょう。

AIによる単純作業の自動化により、従業員は、より付加価値の高い業務に専念できます。例えば、データ入力や電話対応などの時間を削減し、顧客との打ち合わせなど、人にしかできない作業に注力することができるでしょう。

また、AIは大量のデータを解析し、傾向や需要の予測を立てることも得意です。このAIの能力を活用すれば、リソースを適切に配分したり、効果的な戦略を策定したりすることが可能になるでしょう。

顧客満足度が向上する

AI導入のメリットの2つ目は、顧客満足度が向上することです。AIの活用により、顧客サービスの質が向上し、顧客満足度を高めることにつながります。

AIが蓄積したデータを分析することで、顧客のニーズにあったサービス・商品が把握でき、顧客への提案を最適化できます。

例えば、スーパーマーケットの顧客データを分析し、同じ地域の顧客が好む商品を見つけ出せば、売れ筋の商品をピックアップしたセールやキャンペーンを実施するなどの施策が行えます。

また、顧客のニーズや市場の動向をAIで予測できれば、在庫管理にも役立ちます。予測したデータを基に充分な在庫を準備しておくことで、商品を求めるより多くの顧客へと提供することも可能です。

また、ECサイトなどで使用するレコメンド機能にも、AIが使われています。購入履歴や検索履歴などの顧客データを利用し、ニーズにあわせた商品を表示できるため、顧客満足度を高められるでしょう。

事故発生を防止できる

AI導入のメリットの3つ目は、事故発生を防止できることです。データ分析や検知といったAIの技術によって、事故を未然に防ぐことにつながります。

例えば、製造業では、AIが工場内のデータをリアルタイムで分析し、異常値の検知が行えます。異常値が検知されると自動的に機械を停止させる、作業者に警告を送るなどの動作をすることで、事故や機械の故障発生が避けられるでしょう。

また、物流業界や交通業界においても、AIは交通事故の防止に役立ちます。自動運転技術により、運転中のドライバーのミスによる事故の減少につなげられます。このように、AIによるデータ分析や検知技術は、事故発生を未然に防止するために非常に有効です。

人件費の削減ができる

AI導入のメリットの4つ目は、人件費の削減ができることです。AIによって、自動化や効率化が進むと、これまで人間が行っていた業務を減らせるためです。

例えば、カスタマーサポート業務にAIを導入すると、自動応答システムや自然言語処理技術によって、問い合わせに対する返答を自動化できます。これにより、カスタマーサポートスタッフへの問い合わせ数が減り、人件費の削減につなげられるでしょう。

また、製造業では、製造ラインの監視や品質管理の自動化に、AIが活用できます。従業員が目や手を使って行っていた作業を代替えできるため、残業手当や休日出勤にかかっていた人件費を抑えることができます。

業務の質を改善できる

AI導入のメリットの5つ目は、業務の質を改善できることです。AIは、データ分析や検知技術、自然言語処理などの分野で高い精度を持つため、ヒューマンエラーが起こりやすい作業をAIに代替えすることで、業務の質を高められます。

例えば、財務会計分野で、AIによる自動データ入力やエラーチェック機能を活用することで、入力ミスや計算ミスを低減できるでしょう。このように、データ分析や検知技術といったAIの技術を活用することで、業務の正確性や効率性の向上が見込めます。

AI導入のデメリット

AIを導入する際は、デメリットについても理解しておきたいものです。ここでは、AI導入の以下4つのデメリットを解説します。

  • 導入にコストがかかる
  • 雇用が減少する
  • 責任の所在が曖昧になる
  • 情報漏えいのリスクがある

導入にコストがかかる

AI導入のデメリットの1つ目は、導入にコストがかかることです。AIの導入には、専門的な知識や技術を持った人材の雇用コスト、システムの導入コスト、運用・保守コストなどがかかります。実際にどの程度必要になるかは事業や導入規模によって異なりますが、導入時にコストが発生することは避けられません。

例えば、小売業で販売予測や在庫管理にAIを導入する場合、POSデータの取得や加工、AIモデルの構築や運用費用がかかります。また、人員の育成やトレーニング、AIの運用・保守にかかるコストも確保しておく必要があります。

そのため、AIを導入する前に、コスト対効果を慎重に検討し、適切な導入方法を選択していくことが重要です。

雇用が減少する

AI導入のデメリットの2つ目は、雇用が減少することです。企業がAIを導入することにより、人手不足の解消や業務の自動化が進むため、一部の業務では雇用が減少する可能性があります。

AIは、単純作業の自動化に適しているため、定型業務に従事していた人々の雇用が減少することが予測されています。ただし、AIによる自動化がすべての業務に適しているわけではありません。また、AIを導入することで、AIの研究者やAIのプログラマーなど新しい職種が生まれることが期待できます。

さらに、AIで代替できない人間の判断力やクリエイティブ性が求められる雇用が増加する可能性もあります。そのため、AI導入がもたらす自動化による雇用減少の影響は、どの業界でも受けるとは限らないと言えるでしょう。

責任の所在が曖昧になる

AI導入のデメリットの3つ目は、責任の所在が曖昧になることです。AIは、データに基づいた自己学習ができるため、AIによって判断された結果に対して、誰が責任を持つべきかが明確ではない場合があります。

例えば、AIによる自動運転技術の普及が期待されています。しかし、自動運転車が事故を起こした場合、運転者とAIのシステム開発者または製造者の、どちらが責任を負うべきかは明らかにされていません。

現時点では、AIの判断によって事故やトラブルが発生した際に、基準となる法律がないため、責任の所在は曖昧になっています。そのため、AIを導入する際は、AIによって判断された結果に対して、企業が責任を問われる可能性があると理解しておく必要があるでしょう。

情報漏えいのリスクがある

AI導入のデメリットの4つ目は、情報漏えいのリスクがあることです。AIは、ネットワーク上のあらゆるデータをもとに処理を行うため、その過程で機密情報が漏えいするリスクがあります。

AIが扱うデータには、特定の企業秘密や戦略的な情報が含まれることがあるため、不正アクセスなどにより情報が漏えいすると、企業の信用。

そのため、AIを導入する際には、データの取り扱いに関するセキュリティ対策を強化していくことが重要です。また、情報漏えいが発生した場合に備えて、事前に対応策を準備しておく必要があるでしょう。

業界別AIの導入事例

自社でのAI導入方法を検討する際には、業界での導入事例を参考にしてみましょう。ここでは、以下5つの業界でAIが活用されている事例を紹介します。

  • 小売業
  • 製造業
  • 物流業
  • 不動産業
  • 農業

小売業

小売業における導入事例として、サポートセンターでのAI活用があります。サブスクリプションサービスの開始時などは、問い合わせ数が急増し、コールセンターやメールの対応業務が追いつかない事態が発生してしまうことも少なくありません。

改善のためには、顧客とのコミュニケーションを効率化できるサポートセンター体制を作ることが大切です。例えば、AIを搭載したチャットボットの導入などが有効です。

チャットボットは、24時間体制で購入手続きのサポート、FAQなどの問い合わせに迅速に対応できます。チャットボットの導入により、サポートセンターの混雑が軽減され、顧客満足度を維持できるようになるでしょう。

製造業

製造業におけるAIの導入事例として、製造ラインの監視や品質管理の自動化が挙げられます。製造業では、監視や品質管理の業務が欠かせません。

AIは、製造ラインで生産された製品の外観や寸法などを自動的に判断し、欠陥品を検出することが可能です。また、AIは、製品に含まれる欠陥のパターンや製品に含まれる不良率などを分析し、製造ラインや製品の品質管理に役立てられます。

このように、製造業にAIを導入すると、製造ラインの効率化と、品質の向上が期待できます。

物流業

物流業におけるAIの導入事例として、ルート最適化や配送管理の自動化が挙げられます。ネットショッピングの市場拡大により、物流業界では人材不足の問題を抱えています。そこで、物流業ではAIによる効率的なルートや配送管理に注目が集まっています。

AIは、配送先や時間帯、交通情報などを分析し、最適なルートの自動算出が可能です。配送ルートの短縮は、輸送にかかる時間とコストの削減につながります。

不動産業

不動産業におけるAIの導入事例として、不動産の評価や建物管理が挙げられます。不動産業では、過去の売買取引のデータ収集にかかる負担が大きく、マンション物件の査定が効率的に行えないことが課題となりがちです。

そこで、マンションの査定業務ではAIの活用が有効です。AIは、物件の立地や面積、築年数、過去の取引価格などのデータを分析し、適切な価格査定を提案します。

また、建物の管理でもAIは役に立ちます。AIを搭載したビデオ解析や顔認識技術を活用することで、不審者や緊急事態の検知が行えます。

さらに、建物の内外部ではAIが機器や外壁を監視することで、故障や劣化状況を察知することが可能です。AIの分析データを基にすることで、点検や修繕の適切なタイミングを把握できるようになるでしょう。

農業

農業におけるAIの導入事例として、害虫検出や収穫予想などが挙げられます。

AIは画像認識技術を使用し、病気や害虫による損傷を検出し、農業者にアラートを出すことができます。これにより早期対策が可能となり、収穫量を高めることができるでしょう。

そして、AIは気象データや過去の収穫データを分析し、収穫量や収穫時期を予測することも可能です。AIの予測を基に、農業者は効率的な作業計画を立てることができ、リスク管理が行えます。

また、農業ではAIを搭載したドローンやロボットの活用も有効です。農地の遠隔監視や作業自動化を実現することにより、労働力不足や労働者の負担過多などの問題が解決できるでしょう。

まとめ

AI技術を取り入れることで、生産性の向上や人件費の削減、業務の質の改善など、多くのメリットが得られますが、一方で導入コストやセキュリティ問題などのデメリットも存在します。

メリット・デメリットを総合的に理解し、適切なAI導入戦略を立てることが、ビジネスの競争力向上につながります。

しかし、自社でのAIの導入方法を決めきれず、頭を抱えてしまうこともあるでしょう。そのような課題を解決するのが、博報堂の「Data Science Boutique」です。「Data Science Boutique」では、マーケティングの知見を持つメンバーが、AI専門企業と連携してビジネスをサポートします。よろしければ、「Data Science Boutique」の紹介ページをご覧ください。

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BIZ GARAGE 編集部

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