2024年10月10日、CX(顧客体験)改革 をテーマにウェビナーを実施しました。顧客接点の複雑化や商品・サービスのコモディティ化が進む中、博報堂がこれまで培ってきた「生活者発想」を拡張したオンオフ融合のメソッドの紹介し、多くの方にご視聴いただきましたので、その模様をお伝えします。
ウェビナーでは、博報堂のCX設計および企画のスペシャリストが登壇し、CX開発の一歩目となる心動かすCXコア体験アイデア開発プログラム『CX heart™』の取り組み事例について語ってもらいました。
本記事では、ウェビナーの内容から、コモディティ化と顧客接点が多様化する社会的背景、CX改革における課題と機会、そして、博報堂オリジナルのデジタル・リアル融合体験開発プログラムなどについてご紹介します。
登壇者
庄司 健一郎(博報堂エクスペリエンスクリエイティブ局 部長)
中島 優人(博報堂エクスペリエンスクリエイティブ局)
目次
はじめに
庄司 健一郎(博報堂エクスペリエンスクリエイティブ局 部長)
本日は「生活者の心を動かす体験をつくるには?」というテーマで、私たちが開発したCX改革のためのコア体験開発プログラムのご紹介を中心にお話させていただきます。
CX(カスタマーエクスペリエンス)は、“ある商品やサービスの利用における顧客視点での体験”を意味しますが、私たちは「生活者の心を動かす体験をつくること」だと捉えています。
つまり、カスタマーエクスペリエンスを改革するということは、生活者の心を動かすことで、ブランドや商品のファンになってもらうことを目指すべきであると考えています。
ただ一言で「生活者の心を動かす」と言っても、いくつかの課題や障壁があります。
課題1:リソースの分断
1つ目は、「リソースの分断」です。企業の中でCXを改善していこうとすると、多くの部署にまたがると同時に、ステークホルダーが多岐にわたることがほとんどです。そのためリソース不足が起きやすいのも事実です。
課題2:オン・オフ、どちらかへの偏重
2つ目の課題は、「顧客接点がオンかオフ、どちらかに偏重してしまっている」ということです。伝統的な企業であれば、オフラインの接点が中心であることが多く、新興の企業であればオンラインでの接点が中心であることが多い印象ですが、こうしたオンオフの体験の分断は大きな課題と言えます。
課題3:ブランド価値向上への貢献が不十分
そして3つ目は、非常に根深い課題かと思いますが、CXを統合すること自体が目的化してしまって、その先にあるブランドや商品サービスへの貢献が見えづらいということです。このことから、事前にゴールを定めておくことがとても重要になってきます。
これらの課題を解決するための糸口として、私たちは、CX改革のための、「生活者の心を動かす体験を創出するプログラム」を開発しました。これからその内容について、博報堂エクスペリエンスクリエイティブ局の中島よりご紹介させていただきます。
プログラムの背景とチャンス
中島 優人(博報堂エクスペリエンスクリエイティブ局)
生活者体験が重要になってきている背景としてまずあげられるのは、「あらゆる商品やサービスがコモディティ化してきている」ということです。同時に「顧客接点の多様化と長期化」ということも見逃せません。
あらゆる商品やサービスのコモディティ化
今は製品の質が、ほとんど満足できるレベルに達しているため、ブランドや商品の差がつきづらい時代です。また、生活者だけではなく、家電製品や自動車など、あらゆるものがスマホ、あるいはインターネットと接続していて、生活者、企業、社会の三者が常時接続している状態が生まれています。(生活者インターフェース市場)
つまり、「モノ×デジタル」、「場所×デジタル」、「人×デジタル」といった具合に、リアルとデジタルの関わり方も、テクノロジーの進歩とともに複雑化しています。さらに、SNSが発展したことで、情報がリアルからデジタルに拡散されたり、あるいはデジタルからリアルの方に流れたり、リアルとデジタルが境目なく融合しているのが、今という時代の特徴です。
顧客接点の多様化と長期化
顧客接点が長期化するときの課題に関してですが、これまではブランドが成長するためには、新しい顧客を獲得していくことが大事だと思われていましたが、国内市場の成長自体が鈍化していくに伴い、新規顧客を獲得するということ以上に、いかに既存顧客を維持していくか、あるいはファンとして育てていくかが重要になってくると思われます。
このことを説明するためによく用いされるのが「1:5の法則」です。これは、顧客維持と較べて新規顧客を獲得するためには、5倍のコストがかかるということを表現したものです。
また、「5:25の法則」というのもあって、顧客の離脱を5%抑えることができれば、利益率が25%向上するということも経験則的に言われています。
これらのことから、生活者体験(CX)の視点でブランド価値を生み出すためには、
- 「コモディティ化が進む中でどう価値の違いをつくるか?」
- 「どう接点を作り、生活者とつながるか?」
- 「どうファンになってもらうか?」
という3点が重要になってきます。
生活者体験のチャンス
生活者体験のチャンスについてもお話させていただきます。
まず、今は情報爆発の時代を越えて、「接点爆発の時代」ということが言えると思います。つまり、あらゆる顧客接点が、生活者の心を動かす、ブランド体験の心臓部になりうるわけです。 実際、こうしたチャンスを捉えてCX改革に成功している企業や事例が、次々と生まれてきています。
たとえば、マットレスブランドが百貨店で売るだけではなく、ビジネス街に仮眠スペースをオープンして接点を作ったり、ネットスーパーのアプリが物価データと連動することで、インフレにやさしいレシピを提案するサービスを進化させたり、あらゆるタッチポイントが心を動かす体験の場になる可能性を秘めているのです。
博報堂オリジナルのプログラム『CX heart™』
今まで述べたようなビジネス環境、また大きなチャンスがある中で、私たちは博報堂が企業フィロソフィーとしてきた生活者発想というDNAを、エクスペリエンス領域に拡張できないか? あらゆる接点を、生活者の心が動くブランド体験の場にできないか? と考えました。そうした思いから生まれたのが、今回ご紹介する『CX heart™』です。
『CX heart™』は、CX改革のためのデジタル・リアル融合体験開発プログラムで、オンオフを融合させ、企業アセットを統合しながら、CX改革の一歩目となる“コア体験アイデア”を社内関係者の皆さんとワークショップ方式で開発していくものです。⇒詳しくはこちら
『CX heart™』は、2つのツールを活用して進めますが、1つ目のツールは、これまで培ってきた生活者発想を拡張し、3つのステップ(視点)からオンオフ融合のコア体験アイデア発想を支援する「3つの生活者発想」です。
具体的には、以下の3つのステップで進めます。
-
生活者シーン発想
-
心動かす体験価値を発想する生活者インサイト発想
-
CX全体を統合するコア体験装置へと発展させる生活者エコシステム発想
そして、次のツールは、3つの生活者発想で生まれた体験アイデアを一枚のシートで俯瞰する「CX heart Map」です。 CXのアイデアは複雑で多岐にわたる傾向があるので、社内での共有やコンセンサスを得やすいように、一枚のMapにするのがポイントです。
オンラインとオフライン、あるいは生活者視点とブランド視点を横断し、掛け合わせながら、コア体験アイデアを社内関係者の皆さんと開発していくわけですが、このMapがプログラムのゴールになります。
レポート後編はこちらから⇒顧客接点を改革しブランド価値を向上させる「CX heart™」活用法|ウェビナーレポート(後編)
博報堂では、企業のCX改革を推進する社内ワークショッププログラム『CX heart™』 を提供しています。生活者発想に基づいた3つのステップで心動かすCXコア体験アイデアを創出します。ご関心のある方は、お気軽にお問い合わせください。 |

BIZ GARAGE 編集部
ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代。
BIZ GARAGEのコラムでは、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。