最終更新日 2024.4.5

ウェビナーレポート|サステナビリティ成功の鍵は「仲間作り」にあり!(前編)

2023年9月7日、SDGs・ESG領域における企業の社会実装アクションを紹介するウェビナーを実施しました。すでに社会課題に取り組んでいる専門家が登壇するということで、多くの方にご視聴いただきましたので、その模様をお伝えします。 

ウェビナーでは、持続可能な地域や社会をつくるためにさまざまな活動を行っている、Yahoo! JAPAN SDGs編集長の長谷川琢也氏と、社会課題解決のプロジェクトを数多く支援し社会活動家との幅広いネットワークを構築している、クラウドファンディング運営のREADYFOR小谷なみ氏が登壇。

企業の社会課題解決の活動が注目されるなか、「仲間作り」の秘訣とその重要性について語っていただきました。 

SDGs事業の企画でお困りの方へ
博報堂グループでは、SDGs視点での商品/サービス開発を支援しています。具体アクション設計から実装まで一気通貫で、専門家チームによって推進します。SDGs事業で課題を抱えている方は、ぜひ「Social Booster」サービス詳細をご覧ください。

目次

はじめに

博報堂SDGsプロジェクト 共同リーダー 兎洞 武揚

社会的インパクトと経済的インパクトの両立。博報堂SDGsプロジェクトは、いわゆる「ダブルインパクト」をミッションにかかげ、活動を推進しています。SDGs領域の取組みは、社会的な意義を求めるあまり、事業における効果やビジネスといった側面が軽視されるケースが多いかもしれませんが、実際に「ダブルインパクト」を目指すとなると、なかなか難しいことも事実です。

では、なぜ難しいのか。それは、SDGsにはビジネスの領域だけではない、多様な視点が必要になってくるからです。言い換えれば、多様なパートナーや仲間が必要になってくるのです。 

今回のウェビナーでは、SDGsに関わるサステナビリティや社会課題解決を実践してきた先駆者の皆さんから、仲間づくりという観点でお話を伺います。 

博報堂では、社会に対して活動を起こそうとする企業と、想いを持った活動家とその先の応援者を繋ぎ、各領域で社会を変える活動を加速させる(Boost)ための、SDGsソリューションプログラム「Social Booster」 を提供しています。⇒サービス紹介ページはこちら

 

SDGs・ESGs領域における企業の社会実装アクション~社会課題の変遷と企業の取り組みの事例

READYFOR株式会社 小谷 なみ 氏

クラウドファンディング10年目で見えてきた、社会課題への関わり方の変化と仲間作りの重要性

私たちREADYFORは、「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」ことを企業ビジョンにかかげ、「想いが乗ったお金の流れをふやす」ことをミッションに、2011年より、日本初のクラウドファンディングサービスの事業を始めました。

クラウドファンディングは、ご存知のとおり、インターネット上で不特定多数の人々から寄付と応援の声と資金を集める仕組みですが、READYFORは、2011年の東日本大震災の後に立ち上げ、様々な社会活動に取り組まれる事業会社や個人の資金調達のお手伝いをしてきました。そしてコロナ禍以降は、基金運営事業や遺贈寄付事業など、「想いの乗ったお金の流れ」を多角的に進める事業を展開しています。 

とくにこの10年間は、クラウドファンディング自体の認知度・理解度も深まり、プラットフォーム上で掲げられるプロジェクトの社会課題テーマなど、支援者のニーズも多角化・複雑化し、同時に活動団体・支援先の選択肢も増加しています。それに伴い、意思決定の難易度も上がってきていて、あらためて、「仲間作り」ということが非常に重要になってきています。

さらに、一度築いた関係性を維持・継続し、エンゲージメントを中長期的に高めることが、ますます重視されています。そうした観点から、成功した事例をいくつかご紹介します。 

事例1:「企業が繋がりを持てる生活者と一緒に取り組む」

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SDGsウイークにスポンサードいただいたHORIPRO様と一緒に、SNSで発信。直接、金銭的な支援をするのではなく、企業が接点を持つ生活者を支援者に変化させ、同じ社会課題領域を支援する仲間づくりに成功。 

事例2:「従業員を巻き込みながら、一緒に取り組む」

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従業員寄付の新しい事例。震災やコロナ禍といった緊急事案が発生したときに、企業の方が従業員を巻き込みながら、一緒に寄付活動をしていく。自社に閉じずに、世の中の人と一緒に仲間になりながら、社会課題を解決していく。 

事例3:「従業員を巻き込みながら、マッチング寄付」

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企業の資金を原資に、特定のテーマに対して支援を行う団体を公募し、クラウドファンディングプロジェクトを実施。企業や従業員が一緒になって、課題を発信したり拡散したりする。 

事例4:「企業がクラウドファンディングに取り組む」

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クラウドファンディングは、個人だけでなく、企業が主体となって取り組むケースが増えている。

クラウドファンディングの3つのポイント

以上の成功事例から、クラウドファンディングのポイントは、以下のように総括できます。 

「支援集めは、仲間集め」 

支援することで、同じ目的や課題を共通に持つ人々と繋がりが持て、そのこと自体がオンライン上で可視化される。同時に、熱量も伝播する。 

「クラウドファンディングはプロセスエコノミー」 

どんなプロジェクトも準備期間を含め、軌道に乗るまで数か月を要する。その過程も含めてSNSなどに公開しながら、少しずつ賛同者を集め、仲間の輪を広げていくことが重要。 

「プロの巻き込みが重要」 

成功の秘訣は、プロを巻き込みながら支援者や社会課題に対する解像度を上げていくこと。これまで知らなかった事実や知見を知ることで、プロジェクトそのもののリアリティや純度を高めることができる。 

「個人の思いを社会課題解決とビジネスにつなげるために」

ヤフー株式会社 長谷川 琢也 氏

一人では実現できないことも、人を巻き込むことで可能になる 

私は社会人になる前から、日本のいろんな土地を旅しながら、地方が疲弊していることを感じ、同時に何か自分の力で元気にしたいと考えていました。そんな時、ヤフーという企業と出会い、いろいろな仕事を経験する中で、2011年3月11日の東日本大震災が起こり、震災ボランティアとして東北地方の復興に向き合うことになりました。 

はじめは、自分が本当に貢献できるのか、不安を抱えていましたが、現地でいろんなボランティアの皆さんと出会ううちに、自分一人では何もできないけれど、みんなでチームを作ってプロジェクトを起こせば何か生み出せるのではないかという思いを強くしていきました。 

個人の強みと企業の強みを掛け合わせる~「復興デパートメント」 

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まず気づいたのが、地元の人たちはあまりインターネットに強くないということでした。そこで、インターネットに強い現地の若者やボランティア、クリエイターなどのプロフェッショナルを巻き込むことを考えました。

さらに、そこに自分の出身企業であると同時にシステムやプロモーションを得意とするヤフーの強みを掛け合わせることで、単なる慈善事業にとどまらない取り組みができると考えました。 

そんな流れで始めた活動が、「復興デパートメント」というネット上の総合百貨店です。 

この活動は、①ネットの強みを活かして「東北の本当にいいもの」を全国に発信すること ②地元にEコマース人材を創出すること ③プロフェッショナルのネットワークによるサポート というビジョンを掲げ、資金面でヤフーの支援を受けることもできました。 

ヤフー石巻復興ベース開設へ~単なる復興支援ではなく、復興支援事業に挑戦

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いろいろ取り組む中で、ヤフーから指摘されたのは、単なる復興支援にとどまるのではなく、事業として成り立つ仕組みを作れということでした。

そのために、活動の拠点も地元に置き、一緒にやってくれる仲間を募り、事務所を構えました。

被災地でまさに地元の人たちと膝を突き合わせ寄り添いながら、福島の伝統工芸に女子の“かわいい”をプラスして福島のポジティブを伝える事業や、出版事業、けん玉のプロモーション、ツール・ド・東北という自転車のイベントを開催するなど、いろんなプロジェクトを立ち上げました。 

漁業との出会い~「フィッシャーマンジャパン」設立

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そして、そんな中で出会ったテーマが、後継者不足にあえぐ、東北の大きな社会課題のひとつである漁業でした。

地元の漁師の皆さんや、水産加工業の皆さんと話す中で、さまざまな課題があることを知り、東北の漁業を失くすわけにはいかない!という思いを強くしました。そして、東北の漁業を盛り上げるために、いろんな垣根を越えた強いチームを作ろうと考えました。

まず、漁師という仕事のネガティブなイメージを反転させるために、「かっこいい、稼げる、革新的」という新3Kを実行するトップランナーになることを目指し、漁師だけではなく、いろんな業界の人にも海に関わってもらいたいという思いで「フィッシャーマン」という新たな職種を発明。実行の中核となる団体として、「フィッシャーマンジャパン」を発足させました。

地元の子供たちを対象にした担い手事業を手始めに、 

  • 水産業特化の副業・兼業マッチングサービス「ギョソモン」
  • アパレル企業とのコラボレーション
  • 大企業の社員食堂との連携
  • ビッグデータを使った商品開発
  • 通販会社との協働事業
  • 航空会社からの支援

などなど、業種、業界、世代を超えたいろんな方々が、海というテーマをきっかけに賛同してくださり、様々な成果を生み出すことができました。 

海というフォーカスの先に広がる、ビジネスの大海

今回ご紹介した事例は、海という課題にフォーカスしたことで、逆に、いろんな方々と仲間になることができ、社会課題解決やサービス開発、商品開発につながったケースですが、私自身、この「フィッシャーマンジャパン」の活動を通して培った経験と知見、ネットワークを活かして、SDGsメディア「Yahoo! JAPAN SDGs」編集長も務めることになりました。 

ぜひ皆さんも、これをヒントに、ソーシャルセクターやネットワークを掛け合わせながら、地方創生の課題に取り組んでいただきたいと思います。 

レポート後編はこちらから
⇒ウェビナーレポート|サステナビリティ成功の鍵は「仲間作り」にあり!(後編)

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BIZ GARAGE 編集部

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