2025年3月6日、「AIエージェントと暮らす時代の購買行動」をテーマにウェビナーを実施しました。生成AIの革新は、人々の暮らし方や働き方だけでなく、「購買行動」にも大きく変化をもたらす可能性を秘めています。博報堂買物研究所の調査から、従来の購買プロセスでは見られなかった4つの変化を紐解き、企業が今後取り組むべきポイントについてご紹介します。
本記事では、ウェビナーの内容から、AIエージェントの活用で変わる購買行動、新購買モデル「DREAM」などについて、博報堂買物研究所の調査と共にご紹介します。
登壇者
垂水 友紀(博報堂買物研究所 研究員)
飯島 拓海(同上)
生島 岳(同上)
目次
「買物フォーキャスト」 ―AIエージェントの活用で変わる購買行動

生島 本日は、生成AIの登場によって社会が大きく変化し、生活者の購買行動に変化の兆しが現れる中で、次世代の購買モデルがどのように進化していくのかを、生成AIや独自のリサーチデータをもとに予測した研究結果を中心にお話させていただきます。
はじめに、博報堂買物研究所の紹介をさせていただきます。同研究所は2003年に設立され、“「売る」を「買う」から考える”をスローガンに、20年以上活動を続けてきました。多くの企業がモノ売るという視点で、マーケティング、セールス活動を行っている中で、モノを売るためには、買い手=ショッパーの買いたいと思う気持ちを考えることが重要であると提言し続けています。
本日は、AIエージェントと暮らす時代の購買行動の進化、それに伴う新しい購買行動モデル「DREAM」をご紹介します。
「買物フォーキャスト」とは?

「買物フォーキャスト」は、2016年から博報堂買物研究所が取り組んできた活動で、時代ごとの消費者心理や購買行動を捉えて、これからの買物潮流を予測するとともに、企業がとるべき方向性や指針を発信してきた活動です。
2016年には「欲求流去」、2018年は「選べない買物の悲劇」、2022年には「パーパス買い」といったように、時代の節目に買物潮流を捉える調査研究を行い、企業の次のアクションに繋がる示唆を提案してきました。
本日お話させていただく2025年の「買物フォーキャスト」ですが、着目すべきテーマとして生成AIを掲げています。
2025年の買物フォーキャストのテーマは「生成AI」

電気やインターネットの発明に匹敵する、数十年に一度のイノベーションであるとも言われている生成AIですが、実際に凄まじい勢いで進化していて、2030年まで約53%という高いCAGR*で成長する見込みです。
各企業もいち早くその技術を取り入れて、社会の変化に備える試用のフェーズから、今では生活者に向けたサービスとして、差別化や競争力を向上させる活用のフェーズに移ってきています。
*CAGR:Compound Annual Growth Rateの略で、年平均成長率を意味する指標。企業の売上や投資の成長性を評価する際に使用されます。
生成AIを活用した買物の事例
生島 生成AIを活用した事例をいくつかご紹介しましょう。

まず、大手ECサイトの生成AIを活用した事例です。この企業では、生成AIによって口コミを集約させ、要約された情報としてユーザーが活用できるようにしています。
ある大手スポーツメーカーECサイトでは、チャットボットに生成AIを組み込むことで、リアルに近い接客を可能にしました。

また、大手中古販売ECサイトでは、生成AIの活用によって、抽象的な投げかけでもリコメンドしてくれるサービスを導入しています。ふわっとした問いかけに対しても答えてくれるので、自分では想像していなかったような商品に出会うことができます。

最後に、大手化粧品メーカーのアプリでは、従来であれば、購入後に使い方がわからなければ、自分で調べたり、店舗に聞きに行ったりしたのが、生成AIを活用することによって、購入後も自由なスタイルで質問ができ、調べる手間が省けるようになりました。その結果、購入後に困ることが減り、満足度向上にも繋がっています。

これらの事例から、生成AIによる新たなサービスで、商品の見つけ方や、購入後のサポートといった部分に変化の兆しが見えてきました。
一方で、生成AIの登場で買い物は便利になってはいるものの、現状では情報検索やリコメンド商品説明など、個別的なサポートにとどまっていて、買物を一連の流れとしてサポートすることはまだできていません。
もし、包括的な生成AIのサポートが得られるようになれば、買物はさらに便利になると思われます。
「AIエージェント」の普及と買物の変化
そこで新たに生まれているのが、一つひとつの指示を与えなくても、複雑なタスクを一気通貫でやってくれる「AIエージェント」です。「AIエージェント」は、生活者が依頼すれば、計画、実行、評価までを自ら考えて行ってくれます。
例えば、大手オンライン配達サービスでは、今までは生成AIを活用してユーザーからリクエストを受けて、レシピや材料を提案するだけだったのが、「AIエージェント」によって、ユーザーの意図を理解して、自律的に最適なレシピ材料を提案し、カートに自動的に追加してくれるようになりました。さらに、やり取りの過程を学習しているので、次回の購入時の提案にも活かすことができます。

生成AIによって買物の仕方が変化する中、今後は「AIエージェント」が普及することで、生活者の購買行動がさらに変化していくことが予想されます。
私たち買物研究所では、AIエージェントで生活者の購買行動が変化するという予測のもと、新たな購買行動モデルを考えました。
AIエージェントとの共存で変わる新しい買物行動

飯島 近年、爆発的に進化する生成AIや、めまぐるしく変わる国際情勢、あるいは量子コンピュータの発達に見られるように、現在の延長線上だけでは、未来を捉えることが難しくなっています。
そのため、私たちはまず2040年の望ましい未来や生活者像を予測して、そこから逆上がり的な(バックキャスティングな)洞察を行いました。
2040年の未来生活者像を描くにあたっては、博報堂のバーチャル生活者技術を活用しました。バーチャル生活者というアプローチは、博報堂の生活者データと生成AI技術を組み合わせて独自に開発したもので、“2040年の生活者にインタビューする”という、ユニークな方法を採用することができました。
未来の買物行動を検討した3ステップ

未来の買物行動の検討は、3つのステップに分けて行いました。
ステップ1では、未来に影響を与える技術・生活者の意識変化・社会潮流をデスクリサーチで93個収集しました。
例えば、日本の人口減少予測といったマクロ的なものから、博報堂生活総合研究所の、ひとり消費の増加に関するレポートや、デジタル化に対する懸念心、五感を変える技術的な話まで幅広く集めています。
ステップ2では、ステップ1で集めた93個の事象を8つの未来シナリオに集約していきました。生態モニタリングや表情解析などで人の心理、健康状態が常にモニタリングされる超モニタリング社会や、代替品の普及によって本物志向が高まるといった内容の未来シナリオを作りました。
次のステップ3では、未来のバーチャル生活者へのインタビューを実施しました。未来のシナリオに生きているという設定と、デモグラフィックとサイコグラフィックな情報を生成AIにインプットすることで、未来に生きるバーチャル生活者を作成し、彼らの買物ジャーニーの共通点を図式化しました。
未来のバーチャル生活者の買物行動5つの共通点

その結果、未来に生きるバーチャル生活者の買物行動には、非常に興味深い共通点が見えてきました。
それは「対話」(Dialogue)「推奨される」(Recommended)「体験」(Experience)「確信・承認」(Assurance)「管理」(Management)という5つのフェーズです。
そして私たちは、これら5つのフェーズの頭文字をとって、AIエージェントと暮らす時代の新購買モデルを「DREAM」とネーミングしました。
レポート続編はこちらから⇒AI時代の新購買モデル「DREAM」とは?ファネルからループへ変わるマーケティングとKPI|ウェビナーレポ―ト(後編)
BIZ GARAGE 編集部
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