生成AIは生活者を理解するためのパートナー
入江 本日は、ホットなトピックスでもある生成AIと、博報堂が創業以来、企業フィロソフィーとして掲げている生活者発想を掛け合わせることで、どんな新しい価値創造が可能になるのか、お話させていただきます。
あなたとAIの関係は、何ですか?
まず、生成AIについてですが、皆さんにとって、AIはどんな存在でしょうか? ひとつは、何かわからないことを検索したり、聞いてみる「道具」としての存在ということが言えると思います。
少し進化すると、仕事やビジネスの「パートナー」として活用している人もいるでしょう。また、「競争相手」としてとらえている人もいるかもしれません。実際、“AIが人間の仕事を奪ってしまうのではないか”という意見も出ていて、AIを脅威として考える人もいるのはご存知のとおりです。

この点に関して、私が共感するのが、NVIDIA CEOのJensen Huangが述べている「AIが仕事を奪うのではなく、AIを使いこなす人たちによって淘汰される」という考え方です。とくに今は、私たちがAIをどのように使いこなせるのか、試されている過渡期と言ってもいいのではないでしょうか。
博報堂のフィロソフィー:生活者発想
一方、博報堂は長年、「生活者発想」という企業フィロソフィーを掲げてきました。いわば、私たちの発想の原点とも言えます。
「生活者発想」は、世の中の人を単に消費者として捉えるのではなく、多様化した社会の中で、色々なことを感じたり、考えたりしながら生きる、主体性のある「生活者」として捉え、そのインサイトを深く洞察することから新しい価値を創造していこうという考え方です。
博報堂の生活者発想を支える、2つの論理的基盤
そして、この「生活者発想」を支える論理的基盤として、私たちが続けているのが「生活定点」という、2年に一回行う定量調査と、「HABIT」という調査データ群です。「HABIT」は、いわば生活者を多面的に捉えるデータスペックとご理解ください。
このように、博報堂は、2つの定量調査を通じ、「生活者発想」のアップデートを繰り返しながら広告を創ってきたわけですが、この調査の対象が関東と関西限定であることから、地方都市も含めた国内全体あるいはグローバルで生活者を理解することに限界がありました。

そうした生活者理解の限界を解決するために私たちが考えたのが、生成AIの活用です。いわば、生活者理解のための、さらには新たな価値創造のための“イマジネーションパートナー”としてAIを活用することを考えたわけです。
バーチャル生活者をつくる

栗田 この取り組みの核になるのが「バーチャル生活者」です。「バーチャル生活者」の開発において、私たちは、バーチャルでありながら限りなくリアルな生活者を創ることを目指しました。

まず、ChatGPTやMidjourneyなどの生成AIを使って、生活者のビジュアルと内面、あらゆる側面をバーチャルでシミュレーションしていきます。併せて、企業やブランドに関する調査インタビューをあらゆる角度から検証して、キャラクターに反映させます。
「バーチャル生活者」を構成するのは、基本属性や写真の他に、性格・職業・SNSなども含まれます。
発見に富む生活者にするために工夫することのひとつは、エクストリームな側面を聞いてみることです。そうすると、新たな発見や、私たちが持てなかった視点などが抽出できます。また、具体的な過去のエピソードを教えてもらうことで解像度を上げることもできます。
さらに私たちが重視するのはインサイトです。つまり、普通,他人には言わないけれど、本音や本当の気持ちを表現してくれるペルソナを創っていくことで、新たな価値創造につながる「バーチャル生活者」を具体化でき、リアリティがあり、生々しい発見のある対話が「バーチャル生活者」とできるようになってくるのです。
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